月額5万5000円で自然の中に第二の家が持てるというコンセプトが注目を集め、2021年11月にローンチをすると申込みが殺到。現在は新規会員受け付けを中止し、ウェイティングリストには3600人が登録する人気ぶりだ。
CEOの福島弦(ふくしまげん)とファウンダー兼ブランドディレクターの本間貴裕(ほんまたかひろ)は急成長の裏で、独自のカルチャー、チーム作りにも挑んでいるという。
コンセプトをどう共感させるか
スタートアップの資金調達環境が一気に悪化するなか、大型の調達を成功させた要因のひとつが、ユニークなビジネスモデルにあると福島は語る。
「建築というリアルプロダクトながらSaaSのような側面もあり、一気に拡大ができる事業モデルなんです」
SANUは建築をプロダクトと捉え、全拠点全く同じデザインの建物をサブリース形式で運営している。不動産は所有せず、効率的に拠点の拡大が可能だ。また宿泊の管理は無人で行うなど、ITも活用している。
加えて福島氏は、事業の拡張性への評価のみならず、“Live with nature.(自然と共に生きる)”というSANUのコンセプトを愛し、共に楽しんでくれる投資家に恵まれたと胸を張る。
「初の株主の顔合わせを、ご家族もお呼びして自然の中で実施したんです。自然を通して、投資家、代表者、社員、会員といった立場にとらわれない、人と人との関係性を築きたい。サービスの価値だけでなく一体感を味わえる素晴らしい機会だったので恒例行事にしたいです」
自分たちが使いたいと思うサービスであることは事業をやる上で必須と語る二人。社員同士でも“自然と共に生きる。”を体感しあおうと、全員で1号物件である白樺湖で合宿を行う予定だ。また、福利厚生として、社員が家族でSANUに宿泊する制度も設けた。
ラグビーとホテル経営の経験から挑む組織作り
今後チーム拡大を目指すにあたり、ファウンダーの二人は自身の経験を活かそうとしている。
キーワードのひとつが多様性だ。福島は、ラグビーワールドカップ2019の組織委員会に従事した経験を持つことから、日本代表のチーム作りを、SANUの組織作りの参考にしている。
ラグビー日本代表は、日本国籍ではない選手も多く、多様なメンバーが集まったチームだ。当時現場では、結束を高めるために「君が代」の歌唱練習をしたり、チームメンバーで歌詞にも出てくるさざれ石を見に行ったり、その他にも日本の歴史を学ぶ時間を作るなど、ユニークな組織作りが実施されていたという。
「チームに多様性があるからこそ、当たり前のことに疑問が生まれ、触れたり考えたり言語化することで結束力を高められた。SANUも多様性ある組織にし、当たり前を見過ごさず強くなりたいと思っています」