ゴールドマンのエコノミストは、輸送コストや健康保険料が引き続き高騰していることから、夏以降に消費者物価がより急速に上昇し、食品とエネルギーを除いたコアインフレ率が5月の6%から9月には6.3%に上昇すると述べている。
ゴールドマンは、パンデミック時のインフレの最大要因であった健康保険と自動車の価格が、年末までに下がり始め、年末のコアインフレ率を5.5%、2023年12月には2.4%まで押し下げると予想している。しかし、彼らはコアインフレ率が今年、専門家の予測を大きく上回り、過去6カ月間、常に予想を上回る上昇を続けたことを認めている。
この驚くべき数値は、1960年代と1970年代に見られたものに匹敵し始めている。その当時は、今年5月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率の8.6%を上回る10%以上の物価上昇率が、10年に及ぶ株式市場の低迷を引き起こしていた。
LPL Financialのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチは週末のメモで、より弱気な意見を述べ、旅行関連の需要の急増は、住宅やレストラン、宿泊費の高騰と並んでインフレへの「大きな懸念」になると指摘した。
「消費者たちは今後、10年前と比べて常にインフレが過熱する世界で生活しなければならないかもしれない」とローチは述べ、欧州連合(EU)のクリスティーヌ・ラガルドなどの中央銀行のトップが先週、ウクライナで進行中の戦争などが「経済への供給ショックが長引く可能性を示唆している」と警告したことを指摘した。
「政策立案者らは、インフレ率が何年も望ましい目標値まで下がらないという現実的な課題に対処しなければならないかもしれない」とローチは述べ、労働市場の逼迫がまた、インフレ率をFRBの長年の目標である2%以上に押し上げ続けるかもしれないと付け加えた。
利上げ以外に打ち手がないFRB
1970年代には、複数のエネルギー危機によって石油価格が400%も上昇したが、中央銀行は労働市場の改善を優先したため、インフレが蔓延した。1979年に連邦準備制度理事会(FRB)議長に就任したポール・ボルカーは、金融引き締め策でインフレ根絶に乗り出し、この取り組みは最終的に成功したが、1982 年秋の米国の失業率は第2次世界大戦後最高の10.8%にまで上昇した。
バイデン大統領は、インフレを緩和するため早ければ今週中にも、衣類や学用品など特定の中国製品に対する関税の引き下げを発表するとみられている。しかし、一部の専門家は、この措置が国内のサプライチェーン問題には何の効果もないことを懸念している。バイタル・ナレッッジ創業者のアダム・クリサフリは4日、この決定が「インフレを劇的に動かすことはないだろう」と述べた。彼は、ウォルマートやターゲットなどの大手小売業者が今月始める予定の、「積極的なディスカウント」のほうがはるかに重要だと述べている。
FRB が今年行ったインフレ抑制のための利上げは、株価を暴落させ、景気後退の懸念を増大させた。主要株価指数は先月弱気相場に突入し、テック関連や不動産企業の間で解雇の波が押し寄せている。
「我々は、FRBが経済を破壊することなく、供給サイドでインフレを引き起こしている問題を止められるとは思わない。しかし、現状では、彼らはそうする以外に打ち手がないと考えているようだ」とファースト・フランクリン・フィナンシャルのストラテジストのブレット・ユーイングは述べた。