米エマーソン大学が実施、7月1日に公表した世論調査の結果でも、中絶の権利を連邦レベルで合法化することに「賛成」と答えた人は、有権者の59%にのぼっている。
ただ、上院民主党の穏健派、ジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)に加え、クリステン・シネマ(アリゾナ州)議員がフィリバスターに関する規則の変更に反対していることから、バイデン大統領が目指す法制化の早期の実現は望み薄とみられている。
一方、各州のレベルでは、民主党指導部が中絶へのアクセスの強化に向け、活動を強化している。ニューヨーク州は、中絶の権利を保護するための州憲法の修正に向けた準備が開始された。
また、ワシントン州のジェイ・インスリー知事は6月30日、州警察に対し、中絶を禁止している他州の法律に基づく捜査に協力しないよう指示する知事令を発している。
連邦最高裁の判断が示されて以降、ホワイトハウスは中絶の権利を守るためとして、いくつかの行動を起こした。だが、左派の多くはバイデン大統領も民主党指導部も「対応が手ぬるい」と批判している。政府はほぼ、「最高裁の判断に反対なら、中間選挙では民主党に投票を」と言っているだけにすぎないという。
民主党の左派は、中絶が禁止された州でも連邦政府所有の土地・施設では中絶の処置を認めるようにすることや、最高裁判事の増員などいくつかの案を提示したが、ホワイトハウスはそれらを却下している。
「ロー対ウェイド」判決が覆されたことは、中絶にとどまらず、より幅広いリプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する健康)、避妊、体外受精(IVF)をはじめとする不妊治療にも影響を与える可能性がある。