サル痘の症例に、これまでの記録と一致しないものがある。
過去のものより軽度で局所的
5月にロンドンの4つの性病センターで54人の患者を対象に行われた調査によれば、最近の症例におけるサル痘の症状は、医師が過去に診てきたものよりも軽度で局所的のようだ。
患者は全員、男性と性交渉を持つ男性と識別されており、症状と発疹が出たものの、このグループは性器や肛門部の皮膚病変の割合が非常に高く、発熱や疲労の割合が過去の集団発生よりも低く、5分の1近く(18%)が発疹発症前に何の症状も訴えていないことが判明した。
これまで、皮膚病変は複数の身体部位、特に四肢、顔面および頸部を覆うことが報告されていたが、ロンドンの患者ではより局所的なことが多く、ほぼ3分の1(31%)が性器または肛門部にのみ病変を有していた。
患者の4分の1は、サル痘感染と同時にクラミジアまたは淋病(あるいはその両方)にも陽性反応を示した。このことは、性器や肛門領域の病変が多いことと合わせて、ウイルスが性行為中の密接な接触によって感染したことを示唆していると、チェルシー&ウエストミンスター病院で研究に関わっているルース・バーン医師は述べている。
バーン医師は、この結果は「より広い範囲での感染」を正確に反映しているとはいえず、関わった研究者全員が性病医療従事者であることに起因している可能性があると指摘した。
発疹は性器や肛門部に始まり他に広がらないことも
症例の定義が改まる。これまでサル痘は発熱、リンパ節の腫れ、体の痛み、倦怠感などのインフルエンザに似た症状の後、顔や手足など体の複数の部位にびまん性の特徴的な発疹が現れるのが典型的な特徴だった。だが今回の調査が明らかにしたように、現在の感染拡大で米国、英国、欧州で報告されている症例の多くは、これとは異なっている。かなりの症例で発疹の前症状がまったく存在せず、発疹は性器や肛門部に始まり、他の場所に広がらないこともある。なかには1、2個の発疹が出ただけの患者もいると報告されている。バーン医師は、この感染症が「ヘルペスや梅毒などの一般的なSTIそっくりなかたちで現れる可能性がある」と述べ、臨床医や患者に対して誤診を防ぐために用心するよう促している。