中国は従来、日米同盟について「日本は米国に強制されて、仕方なく付き従っているだけだ」という見方を日本側に示していた。政府関係者は、こうした中国の見方について「日本を何とか米国から引きはがしたいという戦略もある一方、かつての日中友好関係の復活に期待している面もある」と解説する。実際、中国は「習近平中国国家主席のカウンターパートは天皇陛下」という立場を取りつつ、第2次安倍政権の後半くらいから、習氏が日本の首相との電話会談に応じるようにもなっている。
日本はうまく、この中国の弱みを利用してきた。2020年春、習近平中国国家主席の国賓訪問が事実上の無期限延期状態に陥ったが、尖閣諸島などを巡る厳しい対立局面でも、公式の対話は閉ざさない関係を作ってきた。事実上、公式チャンネルが途絶えているオーストラリアの関係者からは、「どうしたら、日本のように、硬軟をうまく使い分けられるのか」という声もあるという。
ところが、どうも最近、趙立堅氏の記者会見でも見られるように、日中間の関係が徐々に剣呑な空気に変わりつつある気配だ。これは、岸田文雄首相が中国に猛烈な対決姿勢を示しているからではない。岸田政権は10日投開票の参院選を控え、自民党右派からの批判を浴びないよう、中国に融和的な姿勢を取らないようにしているが、習近平氏ら中国指導部を名指しで非難するような刺激的な言動は取っていない。
関係者の話を総合すると、中国の怒りの原因は最終的に米国のバイデン政権の迷走から来ている。バイデン政権が迷走するため、同盟国として日本がその穴を埋めようとすればするほど、中国には「日本がこれまで以上に、米国にすり寄っている」という構図に見えるらしい。