ビジネス

2022.07.05 18:00

世界的スタートアップ支援を行う2人が語る「これからの起業の主役は『会社』から『 ヒト』へ」

マーク・ネイガー(左)と堀江愛利(右)


ネイガー:そして今と異なる形で運営されていたSWに出会い、若い情熱と自分自身の起業家精神の赴くままに、SWをアントレプレナーシップの教育の場であるというように定義し直し、120カ国以上で年間1000以上のイベントを開催する現在の形に発展させました。取り扱うテーマが様々な業種を横断しているのみならず、ジェンダーや民族等のダイバーシティを縦断できているのが特徴です。
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例えば女性という属性でとったアプローチに関してですが、そもそもジェンダーの問題意識の高い米国やヨーロッパでも、女性参加者の割合は10-15%程度でした。そこで我々はイベント運営者のみならずメンターやスポンサーまで、ほぼすべての運営陣が女性リーダーシップによって運営される「Women Startup Weekend」を開催しました。その結果、2020年時点で女性参加者の割合が40%近くまで上昇したのです。

SWをここまで拡大させるにあたって活用したのは、SW経験者が自然と世界中に広がっていくことを可能にする経験の分散化モデルです。SWイベントを開くには運営者とファシリテーターの双方が必要なのですが、イベント運営者は他のSWイベントの参加経験がなくてはならず、ファシリテーターはSWイベント参加経験、運営経験の双方が必要であることにしました。

このように経験の階層構造を構築することで、イベントの開催のためにメンバーが世界中を駆け巡ることになり、コミュニティのもつ力によって団体が自然に拡大していきました。
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堀江:コミュニティのポテンシャルを最大限に活かしたSWのもつ影響力の大きさは、まだまだ過小評価されていると感じています。女性起業家が年間に得られる投資額は男性起業家の約2%です。エデュテックやフェムテックなど、女性のニーズに応えるサービスをプレゼンしても理解されないこともあり、まだまだアンコンシャス・バイアスは健在です。

私が女性に特化した起業アクセラレーターを運営してきたのも、シリコンバレーのキーパーソンとのつながりを起点にネットワークとコミュニティを醸成し、社会的にハンデを負った女性たちがより多く飛び立てるようにするためでした。

ネイガーさんはSWを離れ、最近コロラドに移り住んだと聞きました。世界中を飛び回る生活から一転、なぜ田舎の小さな町に腰を据えたんですか?

ネイガー:私が今住んでいるリッチウェイという場所はコロラド州にある人口1000人ほどのとても小さな町です。この町に移り住んだ理由は、そもそも私自身が地方の小さな町で育ったこと、そして何よりSWでの経験を経た自分が次に果たすべき使命は起業家精神を小さな共同体にも浸透させることだと感じたからです。地方がどうやって大都市に打ち勝つのか、そのプロセスに興味と情熱を感じています。

現在はベンチャーファンドを立ち上げ、コロラドの地元の会社に投資しています。最終的な目標はコロラド州を地方都市経済再興のロールモデル都市にすることです。
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インタビュー、構成=岩坪文子、荒川未緒

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