──顧客ロイヤルティを高める秘訣は何だと思いますか。
ツォ:1対1と感じるほどのパーソナライゼーションです。成功企業は、顧客が何を欲しているのか、どんな好みなのか熟知しています。これは後発企業がマネしようと思っても、簡単にできるものではありません。パーソナライズこそが競争力の源泉であり、成功企業ほど多額の投資をしています。
一方でそれが過ぎるとサービス過剰となり、解約につながる恐れもあります。それを防ぐ方法として、情報の透明性を高めることが重要です。つまり、そのユーザーのデータや個人情報は、解約する場合すべて手放し、保有をやめるということを顧客と約束することです。私たちが支援する企業では、こうした努力で、パンデミックが落ち着いた後も顧客数を維持し、解約率は改善できていています。
今後BtoCの分野では、入会のハードルを下げようという動きが出てくるかもしれません。一つは毎月決まった料金を支払うモデルから、使った分だけ課金される従量モデルが考えられるでしょう。例えば、音楽配信や動画のストリーミング事業者、新聞社のウェブメディアなどで導入が進むとみています。
ロビー・トラウブ(以下、トラウブ):私たちが支援しているiRobotジャパンでは、「Robot Smart Plan+」というサブスクサービスを始めました。皆さんもご存知の通り、同社のロボット掃除機は商品価格が6〜10万円と高額です。しかし、サブスクにすれば月額2000円から始められます。しかも、いつでも新しい機種が使えますし、故障した場合でも修理の必要もなければ、買い換えるコストも要りません。
Zuora CRO ロビー・トラウブ
製造業、IoTの分野へ広がる
──サブスクが製造業の世界でも始まっているというのは面白いですね。
ツォ:Salesforce時代、私が強く実感したのは、サブスクにすると顧客がどんな使い方をしているのかよく分かるところでした。ソフトウェアと同じように、モノにセンサーを取り付け、インターネットと接続することで、クルマならスピードや距離、洗濯機なら洗剤の使用量などが見える化できる。
大量のデータを収集して、サーバーに格納すれば、顧客の利用パターンを分析することができます。これを消費者のニーズの変化に対応しながらサービスと組み合わせたビジネスモデル開発や、ブランド価値の向上に活かそうというわけです。
特に日本の製造業には、日立や東芝など名だたる企業が多くあり、ポテンシャルを秘めています。彼らの製品をIoT化しサブスクモデルにすることで、新たなビジネス展開が生まれるでしょう。