鉄鉱石価格の急落に見る、中国経済の気がかりな兆候

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再び成長軌道に乗ったかと思われた中国だが、このタイミングで発表されたある主要な経済指標から、全く逆の事態が起きそうな気配が漂ってきた。

というのも、最近になって、鉄鋼の主要な原材料である鉄鉱石の価格が急落しているのだ。これは、需要の落ち込みを示すものだ。トレーディング・エコノミクスのデータによると、鉄鉱石1トンあたりの価格は、6月24日時点で116ドル。3月初旬の160ドル近い水準から、25%以上下落している。これはかなりの下げ幅だ。

中国は、鉄鋼の最大の生産国であることから、鉄鉱石の買い手としても他国を大きく引き離してトップの地位にある。そのため、鉄鉱石の価格下落は、中国の購入量が平時と比べて減少していることを強く示唆している。世界鉄鋼協会のデータによると、2020年の1年間に、中国は世界全体の57%にあたる11億トンの鉄鋼を生産していた。これは、他のどの国も遠く及ばない数字だ。

中国の鉄鋼生産量が下がると、それに続いて同国の経済が停滞するケースが多い。2015年半ばに、鉄鋼の生産量が減少するという、過去30年以上なかった事態が起きたときもそうだった。その結果、同年8月になって中国の株式市場が暴落し、その余波は世界各国の株式市場に波及した。

今の焦点は、次に中国で何が起きるか、という点だ。国内経済がさらに弱含みになる可能性は考えられる。鉄鉱石の価格が軟調、あるいはさらに下落することがあれば、それは中国が通常レベルの鉄鋼生産を計画していないという明らかなサインと言える。

鉄鋼が長きにわたり中国経済の生命線であり続けてきたことを考えると、これは大問題だ。中国では過去20年間にわたり、大規模な不動産開発が盛んに行われ、広大な国土のあちこちで高層ビルや工場、住宅を建設するために鉄鋼が必要とされてきた。鉄鋼はまた、中国の巨大な製造業の原材料としても重要な物資だ。世界各国の自動車メーカー向けに主要な部品を製造してきたのも、中国の製造業だ。

今回のデータが衝撃的なのは、中国が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴うロックダウンを解除しつつある時期の数字である点だ。最近になって実施されたこれらのロックダウンにより、中国のかなりの地域で、経済は停止状態に陥っていた。ロックダウンの対象となった都市で経済活動が再開しているのなら、製造業が回復する兆候が見られないのはなぜなのだろうか?

今のところ、この理由ははっきりしない。いかなる形であれ、事態が平常に戻りつつあるのであれば、鉄鉱石の需要が徐々に増加し、価格も上昇するはずだ。中国株、さらには香港市場に上場している株式を持つ投資家は、本格的な経済回復の証拠を目にするまで、慎重な姿勢を保つべきだろう。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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