米国商工会議所のCEOであるトーマス・J・ドナヒューは2012年に「世界で最も創造的な起業家が、我が国に滞在できるようにすべきです。彼らはいずれどこかで貢献し成功する。その『どこか』がなぜアメリカであってはならないのでしょうか? アメリカの繁栄は、常に移民の努力、犠牲、意欲、夢によって支えられてきました。我々の未来は、より一層彼らに依存することになるでしょう」と述べている。
移民は入国後、経済活動が低調で環境も良くない低家賃の地域に住むことが多い。米国に到着してから通常3〜10年以内に、低賃金の仕事に代わるものとして企業を創業する人が多い。そうしたビジネスは不動産会社、レストラン、食品店、ネイルサロン、ギフトショップなど、一般的には小規模から中規模の企業だ。2005年の報告書「移民起業家と近隣の活性化」によれば、こうしたビジネスの多くは、近隣の民族グループが必要とする小売や個人向けサービスを提供している。
さらに、2016年の米国政策国家財団(National Foundation for American Policy)の報告書『Immigrants and Billion Dollar Startups(移民と10億ドル規模スタートアップ)』(ステュワート・アンダーソン著)では、アメリカのスタートアップ企業のうち、評価額10億ドル(約1350億円)以上の企業の半分以上(87社中44社)を移民が起業し、7割以上(87社中62社)で移民が経営や製品開発チームの主要メンバーになっていると報告されている。調査によると、10億ドル規模のスタートアップ企業のうち、移民の創業者は、米国で1社あたり平均約760人の雇用を生み出していることがわかった。
アメリカが「機会の国(Land of Opportunity)」であるまた別の理由は、移民の起業家に対して、以下のような支援が簡単に提供されるからだ。
・アメリカ連邦中小企業庁(SBA)の8(a)ビジネス開発(連邦政府との契約)プログラムは、経済的・社会的に不利な立場にある企業経営者が連邦政府と協働できるように設計されている
・難民への支援と社会サービスを提供する「Wilson-Fish(ウィルソン・フィッシュ、WF)」プログラム
・「マイノリティが経営する企業の成長と国際競争力の強化」に取り組む連邦機関Minority Assistance Development Agency(マイノリティ企業振興局)
・国家マイノリティ・ビジネス補助金
米国は現在、かつてないほど分断されていると感じるかもしれないが、この国を偉大にしているものは何なのかを認識することが重要だ。この国では人は状況を乗り越え、工夫と努力、計画と投資資金によって、最高の高みへと昇ることができるのだ。