経済・社会

2022.07.07 07:30

ドル高と小売在庫のだぶつきが、インフレを抑制する可能性

Getty Images

迫りくる景気後退の懸念が増しているにもかかわらず、今後の値下げとサプライチェーンの乱れの解消が、物価上昇率を予想以上に早く鎮静化させる可能性があると考える専門家が増えている。そうなれば、経済的に苦しい米国民や、急激な金融引き締めの影響を警戒する投資家は、のどから手が出るほど欲しい小休止を得られるかもしれない。

2022年には、ガス価格の高騰が全体的な物価上昇率を押し上げる可能性があるものの、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア・インフレ率はすでにピークに達しており、「市場や連邦準備制度理事会(FRB)の予想よりも速く低下するだろう」とパンテオン・マクロエコノミクス(Pantheon Macroeconomics)のエコノミストは6月22日付けの短信に書いている。

ドル高により輸入品が安くなり、在庫が増えて供給不足が落ちつき始めている。そうしたことから、5月に予想外の8.6%という41年ぶりの高水準に達したインフレ率は、コア・インフレ率が6%から3.7%に下降するのに伴い、2023年はじめまでに4.9%まで下がる、とパンテオン・マクロエコノミクスのエコノミストは予想している。市場を揺るがしている大幅利上げをFRBが緩和するにはじゅうぶんな下げ幅だ。

また、バイタル・ナレッジ・メディアのアナリスト、アダム・クリサフリは、支出をためらう消費者に直面する小売事業者は「山のような在庫を抱えて」おり、パンデミック中の需要抑制により商品が山積みになっていることを受け、7月にも積極的な値下げの波が起きそうだと述べている。

値下げが予想される商品はアパレル、家具、テレビ、家電など幅広い範囲に及び、ウォルマート、コストコ、ターゲットなどの大規模小売店も値下げを行うと見られる。ターゲットは5月、利益が急減した低調な決算を受け、来たる値引きが在庫コストの管理に役立つだろうと思わせぶりに述べていた。

「インフレの根本にある要因が、好ましい方向に変化する可能性がある」とクリサフリは述べ、今後数週間で「重要な変化」が起きる可能性があると推測した。また、小麦、トウモロコシ、銅、鉄鉱石といった商品価格の「大きな下落」にも言及した。

ガス価格に関しても明るいニュースがある。ここ数週間で、卸売価格は1ガロンあたりおよそ4ドルから3.75ドル前後に下落している。これは、1ガロンあたり5ドル近くで推移しているガス小売価格が、今後数週間で「極めて大幅な」下落へ向かうことを示唆しているとパンテオンは述べている。ただし、この小休止がいつまで続くかは不透明だ。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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