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2022.07.04 15:00

全世界約4人に1人が洪水のリスクに直面 低・中所得国に集中

安井克至
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Getty Images

世界人口の約4分の1が洪水リスクのある地域に住んでおり、その大半が低・中所得国の人々であることが、学術雑誌「ネイチャー コミュニケーションズ」に掲載された研究で明らかになった。

世界銀行の研究者が査読を行った同研究によると、推定18億1000万人が100年に1度の洪水(毎年1%の確率で発生する洪水)により浸水するリスクにさらされている。

その大部分(12億4000万人)は南アジアと東アジアに住んでおり、インドと中国で3分の1以上を占めると研究者は指摘する。

経済データの分析から、洪水のリスクは貧困や脆弱性と一致していることが明らかになった。洪水のリスクにさらされている10人のうち9人は低・中所得国に住み、約7億8000万人は1日5ドル50セント(約740円)未満で暮らしているという。

リスクを抱えているにもかかわらず、こうした低・中所得国は洪水予防、リスク管理対策、災害発生後の支援の恩恵を受ける可能性が最も低いと研究者は警告する。

ベトナムの大規模な堤防システムを例に挙げ、包括的な予防対策が行われている場合でも、より深刻な災害に耐えることは難しく、100年に1度の洪水で圧倒される可能性が高いと指摘する。

気候変動と「危険な都市化パターン」が洪水リスクを増大させる可能性が高く、洪水予防への大規模な投資と、リスクの高い地域の定住化についてより練られた政策が必要だと研究者は強調している。

洪水のリスクに直面しているエリアの経済活動は、額にして9兆8000億ドル(約1325兆円)だ。これは2020年の世界GDPの約12%に相当する。

洪水リスクにさらされている人々の多くがどこに居住しているかとは対照的に、こうした経済活動の84%は中・高所得国のものだ。洪水リスクがあるエリアで最も経済活動が大きいのは中国で、金額にして3兆3000億ドル(約446兆円)。次いで米国の1兆1000億ドル(約148兆円)、日本の7000億ドル(約94兆円)だ。

これまでに多くの研究で気候災害が世界の最貧困層に不釣り合いに大きな影響を与えていることが指摘されている。バングラデシュ、インド、中国では壊滅的な洪水被害が起きている。専門家は、人為的な気候変動の結果として、今世紀中に嵐、山火事、干ばつ、洪水、猛暑など、稀で極端な現象の頻度と深刻さが増すと警告している。

中国とインドに続いて、洪水のリスクがある地域に住む人々が最も多い国は以下のとおりだ。バングラデシュ(9400万人)、インドネシア(7600万人)、パキスタン(7200万人)、ベトナム(4600万人)、米国(4300万人)、ナイジェリア(3900万人)、エジプト(3900万人)、日本(3600万人)。

しかし、人口比ではオランダとバングラデシュが最も高く、それぞれ人口の59%と58%が洪水のリスクに直面している。以下、ベトナム(46%)、エジプト(41%)、ミャンマー(40%)、ラオス(40%)、カンボジア(38%)、ガイアナ(38%)、スリナム(38%)、イラク(37%)となっている。

翻訳=溝口慈子

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