理由はわからなくもないが、本来、自由貿易を擁護する立場にある保守党の政権の政策としては、悪しき前例を残すことになるだろう。
ご多分に漏れず、この反自由主義的な措置に関しても、電気代をはじめとするエネルギー価格の高騰が主な理由に挙げられている。
英国を含む欧州では現在、ウクライナに侵攻したロシアに対する制裁の影響で、あらゆるエネルギー源が大幅に値上がりしている。
他方、いわゆる途上国では、いまも安価な石炭を潤沢に利用できるため、鉄鋼の価格が安くても生産して利益を出すことができる。実のところ、重要な建築資材である鉄筋の価格は5月初め以来、約14%下落している。
こうした値下がりは、英国内の高コストの鉄鋼生産企業にとっては不利にはたらく。だから英政府は関税の強化に動いているというわけだ。
だが、こうした措置が保守党政権の経済政策の前例になるというのはやはり釈然としない。自由市場や自由貿易を掲げる党が貿易制限(それが関税の本質だ)を導入するのだとしたら、自由貿易を標榜するほかの国もそうしないとなぜ言えるのか。
英国は将来、他国との自由貿易協定が必要なのに、相手側から関税を課されているという事態に陥るかもしれない。