情報溢れるSNS時代のビターな恋愛を描く ノルウェー映画「わたしは最悪。」


この形式が、ストーリーに小気味よいテンポを与えており、各エピソード間を自分なりの想像力を駆使して繋げていくことで、作品の世界がさらに広がっていく。長短はあるものの、興味深いエピソードが続いていく。アカデミー賞で脚本賞にノミネートされたのも十分に納得できる。

HEWORST PERSON IN THE WORLD
(C)2021 OSLO PICTURES - MK PRODUCTIONS - FILM I VÄST - SNOWGLOBE - B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

実は、英題は「The Worst Person In The World」で、その大仰なタイトルから、昨年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたときから、どんな作品なのだろうかと注目していた。カンヌ国際映画祭でも、脚本賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)と争ったことになるが、どちらも甲乙つけがたい脚本かもしれない。

もちろん、計14章にわたって展開される登場人物たちの心のうちをスタイリッシュに表現したトリアー監督の映える映像も卓抜で、舞台となっている北欧オスロの自然豊かな風景も心に残る。ノルウェー発の作品ではあるが、そのままどこで起きてもおかしくはない、SNS時代の恋愛を描いた見事な作品だ。

連載:シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>

文=稲垣伸寿

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事