妊娠時の自宅の空気清浄機 乳幼児の脳の発達を保護する可能性

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大気中に高水準の微小粒子物質(PM2.5)が存在する場合、胎児の脳に破壊的影響がもたらされる可能性がある。

妊娠中にPM2.5にさらされた人は妊娠期間の短縮や子宮内胎児発育不全(FGR)を経験する危険性が高まり、これにより乳幼児の脳の通常発達が損なわれ、さらには生涯にわたる障害が引き起こされる可能性もある。残念なことに、世界人口の90%以上はPM2.5の濃度が高い空気を吸っている。これは、世界保健機関(WHO)の指針をはるかに上回るものだ。

研究者らは環境衛生に関する月刊誌「エンバイロメンタル・ヘルス・パースペクティブス(Environmental Health Perspectives)」に新たに掲載された研究で、乳幼児の脳の発達にPM2.5が与える悪影響を、HEPAフィルターを使用した空気清浄機が緩和できる可能性に気づいた。

研究者らは先行研究の中で、各人が最も多くの時間を費やしている屋内の部屋でHEPAフィルターを使用した場合、PM2.5の濃度を29〜82%下げられることに気づいた。建物・住宅内の粒子状物質の大半は屋外を発生源としている。

モンゴルとカナダを主に拠点とする研究者らは、妊娠中の粒子への曝露を減らすことが子どもの神経発達の改善に役立つかどうかを調べ始めた。

研究者らは2014年1月から2015年5月にかけ、モンゴルのウランバートルに住む540人の妊娠中の女性を集めた。首都ウランバートルには、モンゴルの全人口約300万人の半分ほどが住んでいる。冬の間、毎日のPM2.5の平均濃度水準は1立方メートル当たり687マイクログラムまで増加した。これはWHOの上限の約27倍に当たる。

同市の住民の60%以上は、石炭を使用したストーブに頼る伝統的なモンゴル式住宅に住んでいる。こうした住宅が、同市の屋外のPM2.5の少なくとも45%を占めていると推定されている。

研究者らは、調査が始まったときに妊娠期間が13〜18週だった非喫煙者を集め、妊娠している女性ら268人の自宅にHEPAフィルター付き空気清浄機を1つか2つ配置した。研究者らは女性に対し、空気清浄機をリビングルームに置いておくよう指示した。より大きなアパートに住む人は空気清浄機を2つ支給された。

一方対照群の272人の妊婦らは、HEPAフィルターを使用した空気清浄機を受け取らなかった。
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翻訳・編集=出田静

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