キャリア・教育

2022.07.02 20:00

アジカンのフロントマン、後藤正文。幸福や資本主義について発信する理由とは


北野:後藤さんにとっての「幸せ」や「成功」ってどういう感覚だったんですか。

後藤:ロックスターみたいな存在が成功のイメージだった時代もありましたけど、それはあまり幸せとは関係ないな、と思うようになりました。規模と成功はイコールじゃないと感じたんです。どれぐらい素晴らしい時間と空間をつくれるかがが重要なので、たった数人の前での演奏でも最高の夜はあるんですよね。簡単じゃないと思いますよ、成功や幸せを感じるのは。

とにかく物差しをひとつにしないのが大切ですね。例えば、起業して上場しないと成功者じゃないと考えると、そうじゃない自分が苦しくなる。僕の場合は、自分のつくる音楽は自分にしかつくれないのは確かなので、そこを楽しみたいなと思うようになりました。



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北野:後藤さんはインタビューなどで、資本主義に対する発言が多いです。ミュージシャンの立場から「経済」にどんな意識をもたれているんですか?

後藤:経済というより、社会のあり方ですね。お金をもっている人が出せばいい、と思うだけです。100億円あっても個人では使い切れないでしょう?

北野:宇宙旅行くらいしか僕は思いつけません。



後藤:お金という発明は悪いものでなく、例えば製品と食べ物を交換するとき、いまの社会でお金という存在がなかったら困ると思うんです。問題なのはお金ではなく、人間の振る舞い方とか、お金へのかかわり方なだけで。お金をもっている人が何でもできるのなら自分の軍隊を雇うだろうし、自分の国をもちたいという発想になってきますよね。

北野:過度な独占みたいなことに対して、ちょっと違うんじゃないか、と。

後藤:独占に対する反発心は昔からありますね。独占って、基本的に権威なんで。

北野:音楽業界で感じることはありますか。

後藤:難しい話ですが、ストリーミングサービスに対する世界中のアーティストへの配分は、ちょっと少ないなと感じます。
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文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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