ビジネス

2022.06.30 17:00

受注額は毎月「+150%」超。アスエネはなぜ、驚異の成長を遂げたのか


ターゲットとして定めたのは大企業ではなく、中堅の中小企業。ここでも三井物産時代の経験が生きることになる。

「この手のサービスは中堅企業相手には『売れない』と思われがちですが、私はブラジルやアメリカで、中堅企業をメインターゲットに据えて売上を伸ばす会社を見てきました。それに、当時の日本では競合他社の直販営業力がほぼない状況で、たとえ売る力があってもテクノロジーの力がなくて満足のいくサービスが提供できていませんでした」

そんな業界を鑑みて、「ターゲティングとテクノロジーと直販営業力に強みを持てれば、資本の体力勝負にならない限り、ベンチャーでも十分に勝負できる」そう見立てた西和田は、すぐさま行動に移した。

自身の足りない部分を埋めるかのように、創業メンバーとして、直販営業力に強みを持つキーエンス出身の岩田圭弘を取締役 COOに、メルカリ出身のエンジニア、ラクマを開発に迎えた。

「あのとき、もしも中途半端な人材を採用していたら、うまくいかなかっただろうとは今でも感じます。ラクマが来てくれたことでシステム開発のゼロイチができ、サービスをリリースできました。そして、サービスが売れ始めた後に一気に急成長できたのは岩田がいたからです。彼らを連れてきたのが、当時の僕の一番の功績ですね」

「アスゼロ」は毎月+150%超の成長


さらに、サービスリリース後の2020年10月には、追い風も吹き始めた。当時の菅義偉前首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにする」とカーボンニュートラルを宣言したのだ。

そして2021年8月にはCO2排出量見える化・削減クラウドサービス「アスゼロ」をローンチ。温室効果ガス排出量のデータ回収・入力・ 算出をAIと 人力で自動化し、脱炭素経営の業務工数を最大70%削減できるサービスだ。

アスゼロの契約受注額は、現在、毎月平均+150%超の成長を見せている。



こうした「アスゼロ」への注目の高まるなかで、顧客は中堅企業のみならず大企業にも広がりはじめている。

この4月13日には、シリーズBで総額18億円の資金調達も発表した。

今後は「アスゼロ」を最注力事業と位置づけ、調達資金を人材採用やシステム開発、マーケティング費用などに活用していくという。また、シリーズBのエクステンションラウンドも控えている。

「この領域は、グローバルの市場規模が約130兆円以上と非常に大きい。しかもまだ日本やアジアではまだ黎明期のため、潜在的な需要も見込め、競合優位性もある。今後はグローバルにも展開して、勝ち抜いていきたいですね」

文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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