ビジネス

2022.06.30

受注額は毎月「+150%」超。アスエネはなぜ、驚異の成長を遂げたのか

アスエネの創業者で、代表取締役 CEOの西和田浩平。学生時代には、音楽の道を志していた


インキュベイトファンド・本間との出会い


その後の2019年、30代前半で起業の道へと踏み出す。ただ、領域は決まっていたものの、肝心の事業内容についてはまだ定まっていなかった。

「再生可能エネルギー、脱炭素ソフトウェア事業、原発処理と、『次世代』をキーワードにさまざまなアイデアや課題を列挙して、関係者にアプローチしながら議論と検証を繰り返しました」

そうして現在の「アスゼロ」や「アスエネ」につながる事業が徐々に頭の中にイメージづくられるなか、運命と言えるような出会いがあった。ある医療系ベンチャーとVCが登壇する講演に参加したときのこと。

講演後の懇談の席で、いきなり、数千万円もの出資を提示されたという。

「出資してくださいなんて話をするつもりは全然なく、ただ当時の自分の領域の課題、事業構想、ビジネスプランについて話をしていたら、その場で『面白い』と言われて。当時、別のVCからも出資の話をもらっていたことを伝えたら、『どちらか選んでくれ』と言われました。その場ですぐには決められず、戦略・構想・ビジネスプランなどの議論を重ねた結果、数週間後に7500万円の出資していただくことが決まりました」

それが、のちにリード投資家となるインキュベイトファンドの本間真彦との出会いだった。


インキュベイトファンドの本間(後列右)らと

今ならベンチャーでも十分に勝負できる


ビジネスモデルのイメージは固まり、資金も調達できた。しかし、当時、メンバーはまだ西和田だけで、プロダクトの影も形もなかった。「責任とプレッシャー、不安、それ以上にワクワクが入り混じった状態」での起業。2019年10月のことだった。

とはいえ、三井物産時代に再生可能エネルギーの投資・M&A事業を担当していた西和田には「業界と課題に精通している」という強みがあった。

まず参入事業として始めたのが、再生可能エネルギー100%を提供するサービス「アスエネ」。独自のブロックチェーン技術を用いたトラッキングシステムを導入し、顧客(法人)が発電所や地域を選ぶことができる「再生可能エネルギーの地産地消」を実現。それにより、地域に資金を循環させることもできる仕組みだ。

「CO2削減のためのビジネスが増えていた海外では、再生可能エネルギーの価格は火力発電より安価になっていました。当時の日本はそこまでは進んでおらず、プレーヤーも限られていたため、参入余地があると考えました」
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文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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