ビジネス

2022.06.30

受注額は毎月「+150%」超。アスエネはなぜ、驚異の成長を遂げたのか

アスエネの創業者で、代表取締役 CEOの西和田浩平。学生時代には、音楽の道を志していた

「次世代によりよい世界を」をビジョンに、気候テック領域でCO2削減に取り組むスタートアップのアスエネ。

現在は、CO2排出量を見える化・削減するクラウドサービス「アスゼロ」を主軸に事業を展開。サービス全体では、直近1年間で契約受注金額が6倍になるなど、急成長を遂げている。

原点に2つの音楽バンド


アスエネの創業者の西和田浩平によると、起業の原点には2つの音楽バンドの存在があったという。

ひとつは、音楽プロデューサーの小林武史とMr.Childrenの櫻井和寿を中心とした「bank band」。小林や櫻井、そして坂本龍一によって設立された、環境プロジェクトの支援や推進などを行う非営利組織「ap bank」の可能性を広げるために結成したバンドだ。bank bandのライブ活動や、CDやDVDなどからの収益は、すべて「ap bank」の活動資金や環境プロジェクトへの融資に充てられている。

もうひとつは、アイルランド出身のロックバンド「U2」。ボーカルでバンドのフロントマンであるボノは、2006年にチャリティ団体「(RED)」を設立。アップルやコカ・コーラ、マイクロソフトといった世界的企業をパートナーに、「プロダクト(RED)」と呼ばれる真っ赤なiPhoneやWindowsを販売し、収益の一部を「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に資金が流れる仕組みをつくっている。

学生時代、自身も音楽の道を志していた西和田は、同時期に2つのバンドによる取り組みを知り、ビジネスと社会に対する価値観が大きく変わったという。

「当時は音楽にしか興味がなく、ビジネスなんて面白くなさそうだと思っていました。ところが、音楽で人に感動を与えながら一定の収益をあげ、それを社会に還元する仕組みをつくりだせることを知り、そういう仕組がつくれるなら面白そうだなと思ったんです。そこから主体的に学びはじめました」

2000年代当時の日本には「社会課題をビジネスで解決する」というメゾットはほとんど見つけられなかったが、海外で「太陽光発電が今後成長する」と言われていたのを耳にし、環境ビジネスへの可能性を感じるようになった。

そこで、太陽光ビジネスに携わることができて、国内外で社会を大きく変える仕組みをつくるチャンスがある商社を目指すことに。大学卒業後の2009年に三井物産に入社した。

同社では、エネルギー原料の国際トレーディング事業経験などを経て、再生可能エネルギーの新規事業開発、投資業務に従事。そして入社7年目の2015年、同社が買収したブラジルのエネルギーベンチャーへの出向を経験したことで、起業への想いが高まっていったという。

「現地のベンチャー企業で尊敬する先輩が経営している姿を目の当たりにして、僕も同じようにグローバルで経営にチャレンジしたいと思いました」
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文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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