中絶の合憲性を否定した米国、政治経済・医療など影響は各方面に

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トランプ前大統領の「功績」?


ドナルド・トランプ前大統領による最高裁判事の指名が、今回の判断の大きな要因であることは間違いない。トランプによって、判事に占める保守派の割合は大幅に高まった。

トランプは、穏健派のアンソニー・ケネディ判事の退任に伴い、保守派のブレット・カバノーを指名。2020年に死去したリベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の後任にも、保守派のエイミー・コニー・バレットを指名した。

中絶擁護派の多くは、トランプを激しく非難している。それに対してトランプは、自らが「影響を及ぼした」との見方を受け入れ、中絶権を認めた判決が覆されたことで、自身はその「功績を認められるべきだ」と主張している。

米経済への影響は?


あると考えられる。中絶を規制することは、特に女性に経済的な悪影響を及ぼすとされている。米シンクタンク、女性政策研究所は2000年、中絶に関する各州の規制がすべて撤廃されれば、15〜44歳の女性の収入は平均1610ドル増加するとの調査結果を発表。米国の国内総生産(GDP)は、約0.5%増加することになると推計している。

企業の反応は?


米国の大企業の多くは、今後も従業員の中絶を医療保険の対象とする考えを明らかにしている。さらに、アマゾンやJPモルガン・チェース、ディズニーをはじめとする数々の大企業が、中絶のために他州に出向くことが必要になった場合には、そのための旅費も負担する方針を明らかにしている。

今後も「合法」とする州は?


ガットマッハー研究所によると、ワシントンD.C.と16州は、今後も中絶の権利を認める。その各州は、次のとおり。

カリフォルニア、ニューヨーク、イリノイ、ニュージャージー、コロラド、ワシントン、メリーランド、マサチューセッツ、オレゴン、ネバダ、コネチカット、メイン、ハワイ、ロードアイランド、デラウェア、バーモント

ただ、中絶を巡る各州の政策はさまざまだ。コロラド州など一部の州は中絶が認められる期間を特定していない一方、マサチューセッツ州は、24週以降の中絶はほぼ禁止している。

編集=木内涼子

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