中絶の合憲性を否定した米国、政治経済・医療など影響は各方面に

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居住する州以外で処置を受けられる?


それは可能だ。いずれの州も現在のところ、中絶を望む人が合法的に処置を受けられる州に出向き、中絶することを罪に問う考えは示していない。

不妊治療への影響は?


今回の最高裁の判断によって、生殖補助医療技術を用いた不妊治療そのものが制限されるわけではない。だが、なかには「生命は受精の時点から始まる」と定義している州もあり、IVFの合法性に疑問符が付けられる可能性はある。

最高裁の判断が下される前から不妊治療の関連施設の一部は、保存・管理しているヒト胚を、トリガー法を制定した州以外に移動させている。

経口中絶薬への影響は?


いまのところ、どのような影響が出るかは不明だ。ただ、これはほぼ間違いなく、法廷で争われることになる問題だろう。メリック・ガーランド司法長官は、米食品医薬品局(FDA)が使用を認めている経口避妊薬「ミフェプリストン」(妊娠10週未満までの使用を承認)について、州がその利用を禁じることはできないと明言している。

流産後の処置に影響が及ぶ可能性は?


可能性はある。流産の処置に用いられる薬の多くは、中絶にも使われるものであり、中絶を禁じた各州の法律の文言が、これらの薬の入手に影響を与えることはある得る。

また、流産に対する処置を行った医療機関が中絶をしたと疑われれば、起訴される可能性もある。

同性婚、避妊の権利が脅かされる?


今回の最高裁の判断は、あくまで中絶に関するものであり、その他の問題に直接的な影響を与えるものではない。だが、保守派のクラレンス・トーマス判事は多数意見の中で、夫婦が避妊薬を使用する権利を認めた1965年の「グリスウォルド対コネチカット」判決や、全米で同性婚が合法化されることとなった2015年の「オベルジェフェル対ホッジス」判決などについて、見直しを検討すべきだと述べている。

一部の州の議員らはすでに、「モーニングアフターピル」とも呼ばれる緊急避妊薬「プランB」の使用禁止の可能性を示唆している。だが、「ロー対ウェイド」判決が覆されたことだけで、各州にこうした避妊薬の使用を禁じる法的権限が与えられるかどうかは不明だ。
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編集=木内涼子

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