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2022.07.05 12:00

那須から世界へ 「観福農」で叶えるサステナ時代の幸福


次に、福祉について。社会課題の解決という文脈で、福祉というのは必須のファクターだが、意外と語られることは少ない。それをGOOD NEWSでは、「障害者の方や子育て中のお母さんなどの就労支援に力を入れています」という。

「技能に合わせてですが、一般の方と同等の給与水準を確保したり、時給ならぬ“分給”を採用することで、よりフレキシブルに働いてもらえる環境を整えています」

実際にバターのいとこの工場を訪れると、一つ一つ丁寧に手作業で作られているのが見てとれる。人が心を込めてプロダクトを生み出すことと、就労支援を上手く掛け合わせているのだ。

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バターのいとこに続く新作として発売される「ブラウンチーズブラザー」。チーズを作る過程で出る副産物、ホエイを活用したお菓子。Tangentesという人気パティシエチームが監修した

また、商業施設内にはミシュラン一星シェフの鳥羽氏がプロデュースするファミリーレストランができるが、そこにお客さまだけではなく、社員食堂としての機能を持たせるという。

「スタッフの方々に、地元の新鮮な食材を使った美味しい料理を楽しんでもらいたい。それにより地元を誇りに思ったり、足元の大切なことに気づきを得るなど、心にも良い循環をもたらせるのではないかと考えています」

土地と作り手と買い手をつなぐ


3つめの農業については、地元農家の野菜を使う、規格外の野菜を使ってフードロス問題に取り組むなどはもちろん、施設全体で出る生ごみの堆肥化にも取り組む。すべてのお店が協力し合って堆肥を作り、それを農家に還元するという仕組みだ。こうしてゼロウェイストを目指すことで、環境負荷を低減させ、なおかつ持続可能な循環を目指す。

他にも、テイクアウト用のカップを全店でリユースする、アプリで貯めたポイントを環境保護に使えるようにする、など、お客さんも一緒になって、社会課題の解決に取り組めるような参加型プロジェクトを検討している。

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生えていた自然木をそのまま柱にし、掘り起こした土を土壁に使用するなど、環境に配慮した無駄のない建築にこだわる。「人々に自然の大切さを楽しく伝えていくことで、切り拓いた土地に恩返しをしたい」と宮本氏

GOOD NEWS NEIGHBORSの中央には中庭があり、そこには自由にくつろげる大きなテーブルと椅子が用意されている。

「最後の晩餐をイメージしてもらえるとわかりやすいと思いますが、“大きな食卓”のもと、老若男女が集って、ああだ、こうだとおしゃべりしながら食事をすることって、やっぱり素敵だなと」言う宮本氏は、食にまつわる体験を通して、土地や作り手、買い手、働き手が繋がり、良いコミュニティを形成していくことを目指している。
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文=国府田淳

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