ビジネス

2022.06.30 07:45

「一度しか体験できない」は価値になる。レガシーシステムの活用


履歴も残らない「デジタルモデル」


「スナップチャット」は、2011年に登場した写真共有アプリです。最大の特徴は、写真やメッセージを受信者が非常に短い時間しか見ることができず、その後は保存されることなく二度と見ることができない点。つまり、一度しか見ることができない写真共有サービスです。
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記録に残らないという仕組みが、コミュニケーションアプリの概念を大きく変えた。

デジタルサービスは半永久的に保存ができること、やり直しが利くこと、再現性があることが当たり前。だからこそ一度しか体験することができないデジタルサービスなら新しい体験が提供できるかもしれません。

例えば、商品の情報が一度しか表示されないレビューサイトはどうでしょうか。情報過多の時代です。一度表示されたのにもかかわらず閲覧されなかったのであれば、潔くそのユーザーに対しては二度とその商品が表示されないほうがいまの時代には合っているかもしれません。
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再訪禁止を価値に「一見さんのみモデル」


紹介者なしに訪れることのできない一見さんお断り。その逆で一見さんしか入ることができないのが「一見さんのみモデル」です。

初めてのお客様のみを迎え、二度と訪れることができない一見さんのみレストラン。シェフは訪れてくれたお客様と最初で最後の対話を重ねながら、その場でコースを決め料理を提供していきます。シェフも、お客様も、その一期一会の料理を本当に大切にすることでしょう。

または、一見さんのみ美術館。来場した方は絵画や彫刻をまさに目に焼き付けるように鑑賞するでしょう。リピーターという概念を打ち壊すことで、作り手は忘れられないものを提供し、受け手は忘れない体験にしようとする唯一無二のサービスが生まれるかもしれません。

アナログゲームのレガシーシステムをヒントに、ビジネスで活用できそうなモデルをご紹介してきました。アナログゲームのレガシーシステムでは、その不可逆性が後のゲームプレイに大きな影響を及ぼすように、一生に一度しか体験できない商品やサービスはユーザーの人生に対して大きな影響を及ぼすことができます。

何でも保存できたり、いつでもどこでも観ることができたりすることに慣れてしまったからこそ、あらためて「一度しか体験できない」という価値に目を向けてみてはいかがでしょうか。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

大山 徹◎電通 事業共創局/電通Bチーム「Play」特任リサーチャー。主に事業開発、教育分野にて、理想の体験から逆算をして、そのプロセスに遊びの要素を加える設計をしている。

文=大山 徹 イラストレーション=尾黒ケンジ

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