キャリア・教育

2022.06.29 17:00

世界、日本で広がる新潮流!教養としての新しいフィランソロピー入門

llustration by Michal Bednarski


「民主主義の実現」という目的


次に代表的なのが、ジョージ・ソロスのオープンソサエティ財団だ。史上最強のヘッジファンド「クオンタム・ファンド」の共同設立者であるジョージ・ソロスが創設した同財団は、1993年設立。民主主義の実現や人権保護のために活動する団体に年間2500件以上の資金提供を行う、世界最大の助成財団だ。過去の累積助成金額は、約181億ドル(約2兆円)にのぼる。最近では、「Black LivesMatter(黒人の命も大事だ)」運動、ミャンマーの民主化へ巨額の支援を行い、直近では、ウクライナへの支援も表明している。同団体の特徴は、「民主主義の実現への強い願い」だ。私財を民主主義や人種差別と闘う団体に投じ続ける、新しい社会をつくるパイオニア的存在といえる。
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ジョージ・ソロスは1930年、ハンガリー生まれ。父親は第1次世界大戦でロシア軍の捕虜となる経験をし、ソロス自身もユダヤ人としてファシズムとホロコーストを生きながらえるという過酷な経験をする。多感な少年時代をナチス占領下で過ごしたソロスの民主主義に対する強い思いが、慈善活動の原動力になっている。「オープンソサエティ」とは、「民主的な統治、表現の自由、個人の権利が尊重されてはじめて社会は繁栄する」とする思想で、ソロスが哲学の博士号を取得した学生時代から温めてきた考えだ。

主な支援対象は、民主主義の実践の支援。「選挙監視」への取り組みとして、西アフリカでインターネット上の選挙監視プラットフォームを開発。「情報の透明性とアクセス」への取り組みとして、1990年代以降、50カ国以上で情報公開法の制定を支援し、技術的・法的助言を行った。

また、経済的公正と正義の支援として、インパクト投資を通じて、女性、難民・移民とその受け入れコミュニティ、人種的・民族的理由による排除に直面しているグループに明確な利益をもたらすファンドや社会的企業に出資を行っている。また、コロナの影響を受けている低所得者や移民労働者への支援、コロナ関連の治療法やワクチンへの平等で安価なアクセスを確保するためのアドボカシー(政策提言)活動やインパクト投資も行っている。
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文=藤田淑子、小柴優

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