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2022.07.02

障がい者雇用から学ぶ、多様性をいかす組織の作り方

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あなたの部下が、すぐに問題報告を上げない理由


もう一つの学びは、徹底的に行動を観察することで問題行動を抑制するヒントが得られることです。

もしかすると皆さんのメンバーにも、なかなか報告を上げてこないメンバーが一人や二人いるでしょう。特にいくら指導しても、問題報告をためらうメンバーに業を煮やしている人もいるはずです。そんなメンバーを「使えない」と、切って捨てるのは簡単ですが、問題の本質がメンバーの能力不足によるものかどうかは再考の余地があります。

あなたは忘れているかもしれませんが、過去にそのメンバーが問題報告をした際、厳しく叱りつけたり、問い詰めたりしたことはなかったでしょうか。

マネージャーにとって問題報告をいち早く上げてくれるメンバーは、本来ありがたい存在のはずです。それにもかかわらず、感情の赴くままに失敗を責め立ててしまったがために、悪い報告をためらうようになっているとは考えられないでしょうか。

もしそれが事実なら、当事者であるメンバーに起因する問題というより、チームが目指すゴールとメンバーの志向、マネージャーの言動が合致していないために起こる問題といえます。

あなたの振る舞いをメンバーのパフォーマンスを左右する環境要因だと考えれば、あなた自身の言動が変わることによって、メンバーのパフォーマンスが大きく変わるかもしれません。

例えば、問題を報告してきた際に怒りに任せて責め立てるのではなく、「早めに報告してくれてありがとう」と一言添えるだけで状況は大きく変わる可能性があります。

先ほどの挨拶の話にしても「挨拶は必ずすべきもの」という一般常識ですら、相手によってはアンコンシャスバイアス(無意識な偏見)に変わることがあります。それを知っているだけでも、パワーハラスメントにつながるような無益な衝突や離反は避けられるはずです。多様性のある組織を束ねる上で有益な思考と言えるでしょう。

あなたが率いるチームに、パフォーマンスの向上やメンバーのやる気を阻害しているルールやマナーはないでしょうか。メンバーに負担を強いている環境要因をなくすだけでも、埋もれていた潜在能力を引き出す可能性は大いに高まります。

多様性のある組織をマネジメントするということは、メンバー一人ひとりに寄り添う環境を整えることと同じなのです。人を変えるのではなく環境を変える。すぐに効果がでますので、実践してみてください。


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中村健太郎◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。

文=中村健太郎(アクセンチュア)

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