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2022.07.01

可燃性ごみからエタノールを生成し、プラスチック製品に。積水化学工業のGXの推進力となるベンチャースピリット

2022年4月、積水化学工業(以下、積水化学)は、微生物によって可燃性ごみをエタノールに変換する技術(BRエタノール技術)の実証プラントを岩手県久慈市でスタートさせた。このプラントでは、標準規模のごみ処理施設の10分の1程度(約20トン/日)のごみを久慈市から譲り受け、エタノールを生成。事業化に向けた最終段階の検証を行う。

ごみを資源へ──かつてない発想でグリーントランスフォーメーション(GX)をリードする積水化学。そのビジョンを同社コーポレート新事業開発部長の吉岡忠彦が語る。


生成されたエタノールは、プラスチック原料に


積水化学がBRエタノール技術に着手したのは、2008年のこと。長期視点で取り組むテーマの1つとしてスタートした。ごみ問題は化石資源への依存、二酸化炭素の排出、海洋プラスチック問題などにつながり、世界各国で深刻な状況となっている。「商品のリサイクルは活発ですが、消費活動や生活の中ではどうしてもごみが出てしまう。製品の最終地点をごみではなく資源に変えたい──それが当社として取り組みたい課題の一つでした」と吉岡はプロジェクトの発端を明かす。探索していく中で、米国のベンチャー企業・LanzaTech(ランザテック)社の技術「微生物触媒」と出会った。

可燃性ごみを低酸素状態で加熱し、分子レベル(一酸化炭素、水素)にまで分解してガス化。このガスをエサとする微生物によって、ゴミをエタノールに変換し、資源に戻す。14年から埼玉県寄居町で1000分の1サイズの小さなプラントで実験を続け、今回スタートした10分の1サイズの実証プラントを経て、25年以降の事業化を目指す。


<BRエタノール技術の概要>


「微生物触媒は、化学触媒とは異なり熱・圧力を用いることなく、自然と共生調和している点が非常に素晴らしい技術だと思いました。微生物によって変換されたエタノールは、プラスチックの原料やその他の用途にも適用可能です。可燃性ごみは分別の必要がなく、建築現場で出る廃材なども含め燃えるものはすべて資源になります」

世界初のプロジェクト。ここにたどり着くまでにはさまざまな課題があった。

「相手は微生物。生き物なだけに何が起こるかわからず、試行錯誤の繰り返しでした。ごみは雑多ですからいろいろなガスが混じる。微生物にとって有毒なガスが混じっていれば死んでしまいます。実際、全滅したこともしばしば。ごみのガス化自体はすでに確立されていた技術でしたが、そこから一酸化炭素と水素を選別して取り出す技術は、我々が新たに開発しました。

また、ガス化のプロセスで何かトラブルが起きて供給が止まっても微生物は死んでしまうので、その時は微生物を一時的に仮死状態にするなどコントロールできるようにしました。今後は規模を大きくしても安定的にエタノールを生産できるのか、極力コストを抑えて効率を向上させるにはどうしたらいいのか、実証実験をしていきます」



岩手県久慈市に設立された実証プラント


「サステナブルだから買う」という世界をつくる


積水化学では、技術面での努力を続けるのと同時に、バイオリファイナリーの啓蒙にも力を入れる。6月にバイオリファイナリー事業の新ブランド「UNISON(ユニゾン)TM」を立ち上げた。5月に行われたアートイベント「MEET YOUR ART FESTIVAL2022‘New Soil’」にも参加。今後は、消費者の共感を呼ぶインフルエンサーやアーティストたちと組んでのPR活動も検討している。



「『安いから買う』『便利だから買う』ではなく、『サステナブルだから買う』という価値観が浸透するよう、働きかけていく必要があります。この事業の目標はサーキュラーエコノミー(循環型経済)。当社だけでは達成できません。ごみを集める自治体、産廃業者、精製したエタノールを樹脂(プラスチック)にする化学メーカー、樹脂からできた袋などにプロダクトを詰めて売る消費財メーカー。そして、そうしたサステナブルな商品を選択して買い、どう捨てるかまで意識する消費者。さまざまなプレイヤーがつながって初めて、捨てたものがごみではなく資源となって循環していく。

そういう新しい世界観をつくっていきたい。資源からものをつくって使って捨てて終わりというリニア(直線)の世界では、製品を生み出す『動脈産業』に対して、廃棄物の処理・再利用は『静脈産業』と呼ばれていました。サーキュラーエコノミーは円。動脈も静脈もなく、誰もがその円の一部を担い、バトンを受け取ってつないでいくものと考えています」

事業を推進するためには国の支援も欠かせない。この事業にも補助金が出ているが、資金投資の面だけでなく「ルールづくりも必要だ」と吉岡は述べる。たとえば、カーボンクレジット(二酸化炭素排出削減効果を企業間で取引できるようにしたもの)における排出量の算出において、BRエタノールはどのように算出するかまだ決められていない。排出削減量として認証されれば、利用促進が期待できるだろう。

「今は国や地域によってもそれぞれカーボンクレジットのルールが違う。ゆくゆくは世界標準のルールが整備され、さまざまな新技術を後押しするような制度ができれば、みんなで課題解決していくことができます」

創業以来続けてきた、社会課題へのアプローチ

BRエタノール技術はまだ開発段階だが、投資額はすでに100億円を超える。資金を回収するまでには時間もかかるだろう。こうした取り組みはトップのコミットメントがなくては実現できない。吉岡はその理由を「積水化学は1947年の創業以来、イノベーションで社会課題解決をしていきたいというDNAが受け継がれている」と語る。

1950年、日本で初めてプラスチックを型に押し込んで成形する射出成形機を導入。64年、前回の東京オリンピック開催にあたっては、都市化で増大した家庭ごみの処理問題を解消すべく、ポリエチレン製の蓋付きごみバケツ「ポリペール」を提案。回収車によるごみの収集の仕組みを東京都や国とともにつくった。

「社内ではこうしたベンチャースピリットがずっと語り継がれている。いまなお技術者たちは『自分たちもイノベーションを起こしたい』と思い続けています」
現在はBRエタノール技術以外にも、一般的な太陽光パネルよりも軽量でフレキシブルな「ペロブスカイト太陽電池」や、世界最大の鉄鋼メーカーのArcelorMittal(アルセロール・ミッタル)社と提携し、製鉄の際に排出されるガスから二酸化炭素を分離・回収、再利用するための技術など、さまざまな新技術の開発が進められている。

収益化と未来をつくることは両輪となり得る

こうした中長期的な目線でGXに取り組み、社会課題を解決するイノベーションを起こしたいという願いは、多くの企業が願っているところだろう。しかし、理想は掲げたものの現実問題として長期的な投資回収に耐えられず、目先の利益を優先せざるを得ないという企業も多い。その点はいかに解消しているのか。

「実は、20年ほど前、業績が悪化した時期がありました。そこで2001年に『住宅カンパニー』『環境・ライフラインカンパニー』『高機能プラスチックスカンパニー』の3つの社内カンパニー制に転換し、1社内で幅広い事業を手掛け、事業部門それぞれがより収益を上げようと励み、1兆円以上売り上げるまでになりました。そこから来る利益があるからこそ、将来への投資も可能になります。収益を上げることと、長期的に大きな開発をして未来をつくること、これは両輪。そのバランスを取ることが大切です。積水化学はポートフォリオ経営によってそのバランスを取っています」



意外なところでは、犬の歯肉炎治療のための大気圧プラズマ治療器まで開発している。これも世界初の製品。もともとあった工業用のプラズマ技術を応用した、まさにイノベーションである。

「家族の一員であるワンちゃんが健康で長生きできたら、家族の生活が豊かになる。たとえば、一人暮らしの高齢者でも一緒に散歩に行くために外に出れば、健康にもつながる上に、新たな人間関係が広がる。そしてそれは豊かなまちづくりにつながっていく。私たちは単に機械をつくって売るのではなく、豊かなまちづくりに貢献したいという意識を常に持っています。

積水化学は、もの、家、まち、さまざまな面から社会課題解決を実装できることが強み。そこに魅力を感じていただき、他社から技術提案をいただくこともありますし、社内でもいろいろなアイデアが生まれます。良いものを安くつくればどんどん売れるという時代は終わりました。人々のニーズは多様化し、VUCAと呼ばれる、不確実で複雑な時代です。私たちは今後も自社の技術力を高めると同時に、さまざまな方々と共創し、幅広い総合力で社会課題解決に取り組んでいきます」

積水化学工業
https://www.sekisui.co.jp/

Promoted by 積水化学 / text by Yukiko Anraku / photographs by Shuji Goto / edit by Kaori Saeki

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