ビジネス

2022.06.27 12:00

俳優エドワード・ノートンが設立したデータ分析企業EDOの実力

Getty Images / Edward Norton


TV広告の効果をアルゴリズムで分析


EDOのアルゴリズムは、120のケーブルテレビ局とTVネットワークが流す番組を取り込み、1日10万本のコマーシャルを見た人々が、その直後に何をグーグルで検索したかを把握する。過去7年間で、2億本以上のCMとその効果を学習した同社のアルゴリズムは、30秒の広告がスポーツ中継やエンタメ番組でどのような層の人々に、どのような効果をもたらすかを、データモデルで予測する。さらに、テレビの制作会社や映画スタジオに、視聴者が番組に夢中になったタイミングを教えている。
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「従来のテレビ広告の売り方は、1950年代から全く変わっていない」と話すのは、EDOのCEOを務めるケビン・クリム(Kevin Krim)だ。かつて、ブルームバーグとCNBCでメディア担当役員を務めていたクリムは、EDOの検索データの分析により、自動車やレストランブランドでは、オーガニック検索と将来の市場シェアの間に90%の相関関係があることが分かったと話す。この数値は、食品や飲料などの消費財ブランドでは80%だったという。

「検索の動向の把握は、企業が市場の動きを予測する上で大きなパワーを発揮する」とクリムは話した。

EDOが業界の人々に支持される理由は他にもある。番組の制作者は、ストリーミングサービスからコンテンツのパフォーマンスに関するデータをより多く得たいと考えているが、HuluやRokuのようなプラットフォームは、広告パフォーマンスに関する十分なデータを提供できていない。一方、ネットフリックスは、ここ最近の加入者数の伸び悩みから、有料のサブスクリプションモデルだけでなく、広告モデルの導入を検討している。
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そんな中、EDOは4月に、ディスカバリーが広告効果を測定するための公式パートナーとしての契約を、結んだばかりだ。

トヨタやIBMが認めたテクノロジー


ノートンは、テレビが依然として広告効果の高いメディアであると考えており、EDOがテレビ広告のインパクトをより詳細に検証する方法を手に入れたと述べている。EDOのパワーは、実際に広告主たちに認知され、2021年の年間経常収益は1600万ドルに達した。トヨタやニューバランス、IBM、ロイヤルカリビアンなどのトップブランドが、同社のツールをテレビ広告の効果測定に用いている。

その他の顧客としては、バイアコムCBS、ワーナー・ブラザース、21世紀フォックス、NBCユニバーサルといったエンタメ界の大手が名を連ねている。EDOは、新たな投資家も獲得しており、先月はロサンゼルスの投資会社Shamrock Capitalから8000万ドルを調達したことを発表した (同社は、現在の評価額を公表していないが2018年のシリーズAの後に8900万ドルと評価された)。

EDOがデータを駆使した効果測定ツールで、ニールセンの市場を奪えるかどうかはまだ分からない。ニールセンは今年後半に、ストリーミング、リニア、その他のオンラインプラットフォームを横断する効果測定ツールのNielsen Oneを立ち上げる予定だ。

「ニールセンは、広告の効果測定とインサイトの提供において業界に深く根付いている。私は、彼らがすぐに消えてなくなるとは思わない」と、調査会社フォレスターのアナリストのティナ・モフェットは話した。

一方、ノートンは、レガシーな企業についての考えをこのように話している。「決まりきったエコシステムに組み込まれた企業には限界がある。それは、ストックホルム症候群(拘束下にある被害者が、加害者に好意や共感の感情を抱くようになる現象)のように彼らから力を奪っていく」

翻訳・編集=上田裕資

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