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2022.06.28 08:00

畳文化を次世代につなぐ 「イ草」アップサイクルマットとは

金井畳店とJAPAN MADEが開発した「tatami upcycle mat」

金井畳店とJAPAN MADEが開発した「tatami upcycle mat」

畳の製造過程では、たくさんの「イ草」が使われずに余ってしまうのを知っているだろうか。

畳に使われるイ草は一定以上の長さが必要で、収穫されるイ草のうち条件を満たすものは約3割。残りの7割のほとんどは正規品に製織されることがない。一部はアウトレット品などに活用されるが、多くは焼却処分されるか、肥料として使用される。

そんな余ったイ草をアップサイクルしようと、東京・浅草橋の金井畳店と、“日本のモノづくり”を様々な形で発信している「JAPAN MADE」がプロジェクトをスタート。多目的で使用できるマット、「tatami upcycle mat(畳アップサイクルマット)」を開発した。


(左から)「JAPAN MADE」編集長 河野涼、金井畳店の4代目 金井功

日本人の「畳離れ」に危機感


プロジェクトが立ち上がった背景には、「畳離れ」への危機感もあった。

「畳のある生活環境を増やさなければ、畳屋の仕事は減っていく一方。新築の物件には、そもそも和室がないものも増えているので、既存ビジネスだけをベースにしていては、新たな需要が生まれることはないんです」

こう話すのは、浅草橋で明治時代から畳屋を営む金井畳店の4代目、金井功。2015年に先代から事業を受け継いだ金井は、その危機感からメイン事業を法人向けから個人向けに切り替え、持続可能な経営を探ってきた。

現代の家にもマッチする新しい畳を作ろうと考え、洋室に敷く「置き畳」やペットを飼っていても安心して使うことができる「わんにゃんスマイル畳表」などを展開。さらにECにも力を入れることで、これらの商品によって、店舗のある地域にとどまらず全国に顧客を増やしつつある。



とはいえ、畳離れは止まらない。金井は、それが畳屋だけでなく取引先のイ草農家にも大きなダメージを与えていることに課題感を抱いていた。そこで考えたのが、もっとカジュアルに日常生活に畳を取り入れられるような、新しい商品づくりだ。

その原料として思い浮かんだのが「畳にならないイ草」。正規品にできないイ草を何らかの形で活用できれば、イ草農家の新たな収入源となる。国産イ草農家の存続にもつながる、と考えた。
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文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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