米電子たばこ大手ジュール、「販売禁止」の決定に反発

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米食品医薬品局(FDA)は先ごろ、電子たばこ大手ジュール・ラブズ(Juul Labs)の製品の販売禁止を決定した。一時は米国のベーピング(液体を蒸発させて吸引する電子たばこ)製品市場でシェア70%以上を支配したスタートアップの今後を、一変させたと言えるかもしれない。

FDAは発表した声明で、ジュールは自社製品の販売が「公衆衛生の維持において適切である」ことを証明できなかったと指摘している。FDAはすでに、フルーツまたは甘味のあるフレーバーの販売を禁止。電子たばこ各社に対し、メンソールやたばこのフレーバーなどについて、今後も販売を認めるべきか判断するため、適切なデータを提出するよう求めていた。

だが、FDAによると、カートリッジに含まれる可能性がある有害な化学物質についてジュールが示したデータは不十分であり、“矛盾するもの”も含まれていたという。そのため同社の製品について、完全な評価を行うことができなかったと説明している。

ジュールは不服申し立てか

こうしたFDAの発表についてジュール側は、「失礼ながら同意しかねる」としている。同社のジョー・ムリーリョCEOはフォーブスに対し、ジュールがFDAに提供したデータは、「公衆衛生の維持に適切」であることを示すのに必要な基準を満たしたものだと主張。禁止命令の停止を求めるほか、法律の下で認められる“あらゆる選択肢”を探索すると述べている。

FDAのこの決定について、販売禁止の可能性を最初に報じた米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ジュールは禁止を不服として申し立てを行うほか、法廷で争うこと、製品に関するデータを修正して提出することなどができるだろうと伝えている。

ジュールは自社の製品が未成年者の喫煙を急増させるきっかけになったなどの批判を受け、一部のフレーバーの販売中止に加え、マーケティングを控えるなど、世間のイメージを回復するための対策を講じていた。

一方、同業他社の製品については、今のところFDAの評価の結果が出ていないものもあり、それらは当面、販売の継続が認められている。

評価額は「暴落」


ジュールが2018年に最後の資金調達を行った際、評価額は380億ドル(約5兆円)とされていた。だが、同社株の35%を保有する米たばこ大手アルトリアは2020年、推定されるその価値を、45億ドルをわずかに上回る程度にまで引き下げている。

若者の間におけるベーピングの流行を問題視したFDAが対応に乗り出したこと、ジュールがマーケティング戦略に関して複数の訴訟を起こされたことが、主な要因とされている。

米国心臓協会や米国肺協会をはじめ、ジュールを非難する医療関連の団体は、同社は若者たちをターゲットとしたマーケティングの戦術として、「電子たばこは従来のたばこより害が少ないことを示唆するなどしてきた」と批判していた。

編集=木内涼子

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