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2022.06.26

2023年末にはパンデミック前の水準に アフターコロナの航空産業における課題

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もう1つ考慮すべきは航空部品メーカーの稼働だ。新型コロナや景気後退などの要因が重なり、世界的にサプライチェーンが大幅に滞っている。米航空会社の平均機齢はおよそ20〜30年。飛行機は他の乗り物と同じように修理やメンテナンスが必要だ。このような状況下で、システム全体に何らかの不具合が生じた場合、特に大きな打撃を受ける可能性がある。

また、航空機内のCO2の換気も引き続き重要で、換気の改善は航空業界にとって最優先事項の1つだ。残留するCO2には、新型コロナやその他の病原体のまん延を促進する飛沫やエアロゾルが含まれている。

マスクの使用を減らすと、CO2レベルが上昇し、より多くの飛沫やエアロゾルが機内に拡散する可能性がある。我々は最近、エアバスA319によるニューヨークからタンパへの国内便でCO2データを収集した。CO2濃度は空港への行き帰りのタクシーの密閉空間ほど高くはなかったが、出発前のニューヨークの屋外の2.5〜4倍のレベルに達していた。平均的なA319は、ほぼ20年前の機体だ。おそらく、古い航空機の換気システムのアップグレードは今後数カ月から数年の間に優先事項となるはずだ。

2015年のハーバード大学の大気環境研究によると、最適な室内空気環境はCO2 1000ppm以下だ。1000ppmでは脳の認知機能が1日に平均15%低下する。1400ppmでは50%の低下だ。航空機内などで長時間CO2にさらされると、新型コロナがもたらす危険性に加えて、長期的に脳の機能にダメージを与える可能性があるのだ。

空気中のCO2濃度は、他人の空気を吸っている状況を示す。CO2のppm値が高ければ高いほど、換気せずに他人が以前吸った空気を吸い込むことになる。多くの航空会社は機内で呼気に含まれる微粒子を除去するために、古い機体でも近代的な高性能エアフィルター(HEPA)を使用している場合がある。

このフィルターは0.3ミクロンの空気中のゴミを除去するが、新型コロナ感染症を引き起こすSARS-CoV-2ウイルスの粒子は0.1ミクロンと小さいため、ウイルス粒子が外に漏れる可能性がある。
--{空港や飛行機の清潔さの向上}--
また、紫外線殺菌照射という方法もある。紫外線を長時間照射することで、表面に付着したウイルスを不活性化させることができる。紫外線は人間の目には見えない。航空機内にUVライトを設置することで、表面汚染によるウイルス感染を減らすことができるかもしれない。

科学・工学・医学アカデミーの報告書は他にも、今後数年間でより一般的になると思われるいくつかの傾向を示している。これらは乗客の信頼感を高め、処理時間を短縮し、タッチポイントを減らし、空港での体験を向上させるものだ。

まずはチェックインだ。航空会社は空港で長いチェックインの列を作らないように努めている。ウェブサイトやアプリを使った早めのオンラインチェックイン、自分でバッグにつけるタグを出すセルフバッグチェック機械の導入などだ。チェックインカウンターに並ぶ人を主にチェックインに問題があった人や例外的な事情のある人だけにし、並ぶ人数を旅行者の50%以下にすることを目指している。

他のトレンドはTSA(米運輸保安局)のセキュリティスクリーニングの向上だ。TSAプレチェックとクリアはセキュリティプロセスを合理化する有料サービスだが、一般的なスクリーニング技術は特に手荷物検査で急速に進化している。

新型コロナ時代で最も注目すべきは、空港や飛行機の清潔さの向上だろう。パンデミック発生以来、顧客の信頼を回復するための主要な手段は、消毒と衛生の保証だった。乗客は新型コロナに感染した人が座っていた席には座りたくない。空港の至るところに除菌剤が常備されるようになり、清掃作業もより厳しくなっている。このような習慣は将来も続くと思われる。

新型コロナの感染率がはるかに管理しやすい状態になるまで、我々が航空会社関連の記事でこれまで強調してきたように、防衛は自己責任となる。航空機内では引き続きN95マスクを着用し、許されている範囲でできるだけワクチンを接種し、隣が空いている席を予約するようにし、飛行中に目や口を触るなどの不必要なリスクは減らすようにした方がいい。一刻も早く安全な旅に戻りたいのはみんな同じだが、これらの提案はそのための最も安全な方法だ。

翻訳=溝口慈子

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