パンデミックの余韻が残るなか従業員のストレスは過去最高水準に

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4月、アンソニー・ファウチ博士は、米国は「パンデミックの段階を脱した」と述べた。しかし、正確にいえば、私たちは正常な状態に戻っていない。さらに困ったことに、従業員のストレス、不安、ウェルビーイング(幸福)に対するパンデミックの余韻は、まだ終わっていないようだ。実際、ギャラップが新たに発表した「グローバル職場環境の現状」レポートによると、従業員のストレスは過去最高水準にあるという。

グレートリセッション(世界的な大不況)は、今日の従業員が、職場で不満がある状態に甘んじてはいけないという強いメッセージを発した。もし雇用主がウェルビーイングをサポートする職場にすることに全面的に取り組まなければ、従業員はほかのより良い選択肢を探し続けることだろう。このメッセージを受け、従業員エンゲージメントのための新しいアプローチを採用している企業もある。しかし、多くは高まる期待に追いついていないのが現状だ。

初期、雇用主はパンデミックに強く反応したが……


パンデミックの初期には、雇用主は従業員がストレスを感じ、苦しんでおり、サポートと安心感を必要としていることに気がついた。多くの企業は、従業員が家庭で抱えている問題を、もはや仕事とは関係のない「プライベートな問題」として区分けすることはできないことを理解し、歩み寄りを見せた。従業員が職場で生き生きと働くための最善の方法は、従業員を1人の人間として大切に思う気持ちを示すことだ。

ギャラップの調査によると、2020年5月、雇用主が自分のウェルビーイングを気にかけてくれていると強く感じた従業員の数は49%に急増した。しかし、その2年後、その数値はパンデミック前の水準を下回り、現在は24%で、ほぼ過去10年間で最低となっている。

何が起こったのだろうか? 3つの可能性が考えられる。1つは、雇用主が従業員のウェルビーイングに最初に取り組んだのが短期間で、その後のフォローアップが不十分だったこと。2つ目は、誰もがパンデミックがどれほど長期にわたるものかを過小評価していたこと。3つ目は、従業員の期待に根本的な変化があり、多くの雇用主がそれについていけなかったことだ。

従業員のウェルビーイングが重要


従業員のウェルビーイングに対する雇用主の関心が急激に低下したことをどう説明するかはともかく、ビジネスリーダーや経営者が関心を持つべき事柄の中心がウェルビーイングであることは明らかだ。私は、従業員ウェルネスプログラムの策定と実施についてコンサルティングを行っているが、CEOに対しては、何年も前からウェルネス(健康)の先を考えるよう促してきた。従業員のウェルビーイングという、より広範で全体的な目標にはメンタルヘルス、人間関係、全体的な活気といった要素が含まれ、これまでの従業員ウェルネスプログラムでは十分に対応できていなかった。
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翻訳=Akihito Mizukoshi

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