米国、欧州、韓国など世界各地でインフレ進行中

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米国のインフレ率は2022年5月に40年ぶりの高水準に達し、この5月までの12カ月で消費者物価は8.6%上昇した。しかし、物価が上昇しているのは米国だけではない。欧州諸国、イスラエル、韓国でもパンデミック発生以降、インフレ率が大幅に上昇している。

ウクライナでの戦争によるエネルギーや食料の高騰により、欧州では5月のインフレ率が前月の7.4%から8.1%に上昇し、過去最高となった。特にドイツ、フランス、スペイン、イタリアではインフレが進んでいる。

韓国のインフレ率は4月に13年ぶりの高水準となり、前年比で4.8%上昇した。韓国銀行は今週、今年のインフレ率は先月発表した推定値4.5%を超えると発表した。ウクライナでの戦争、商品価格の上昇、サプライチェーンの問題、新型コロナ規制の緩和(消費需要の増加)などが要因だ。

2012年から2021年まで極めて低いインフレ率を維持していたイスラエルは、労働市場ひっ迫の懸念は依然として残っているなか、インフレ率の上昇に対処しようと5月に金利を0.4ポイント引き上げた。米シンクタンクのピュー研究所によると、イスラエルのインフレ率は2020年第1四半期から2022年にかけて25倍となり、平均は3.36%となっている。

英国のインフレ率は5月に米国を上回り、前月の9%を上回る9.1%と40年ぶりの高水準となった。ロシアのウクライナ侵攻によって悪化した食品コストの上昇とエネルギー価格の高騰が引き金になった。

米国ではインフレ率が過去最高を記録しているが、データによると、米国は世界経済の中で中ほど位置している。ピュー究所の分析によると、2020年第1四半期から2022年までの年間インフレ率の変化について、米国は先進国44カ国中20位だった。44カ国には経済協力開発機構(OECD)のほとんどの加盟国と、OECDがデータを共有しているその他の経済的に重要な7カ国が含まれる。

農産物の輸入や燃料の流れを遮断しているロシアのウクライナ侵攻によってエネルギーや食料の価格が上昇し、世界中でインフレが進行している。2週間前に米ロサンゼルス港を訪れたバイデン大統領は、インフレは世界的な問題であるとし、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻がコスト上昇の原因だと非難した。

戦争により特に欧州諸国ではガソリンや食料品の価格が急騰しているが、米国では2月に侵攻が始まるかなり前からインフレが始まっている。米国を含む世界の多くの国々では、サプライチェーンの問題と物資の需要増が相まって燃料や食料など主要品目のコスト上昇を招いている。

経済学者やバイデン政権を批評する人のなかには、2021年3月に可決された1兆9000億ドル(約256兆円)の新型コロナ救済法案を含め、パンデミックの間に連邦政府が可決した景気刺激策が米国内の高インフレ率を引き起こしたと主張する人もいる。

オバマ政権下で財務長官を務めたローレンス・サマーズは救済法案の可決前に「この世代でまだ見たことのない種類のインフレ圧力を引き起こすかもしれない」と警告していた。

一方、ホワイトハウスの高官たちは、景気刺激策とインフレの相関関係が誇張されていると主張し、世界中でコストが上昇していることを指摘している。イエレン財務長官は今月初め、バイデン大統領の2021年の景気刺激策のインフレへの影響はせいぜい「わずかだ」と述べ、一方でこの政策が「戦後を通じて間違いなく最も強い労働市場」によって、米国のコロナ後の経済回復を確実なものにしたと主張した。

翻訳=溝口慈子

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