英国で下水からポリオウイルス検出、当局はワクチン接種を呼び掛け

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英国の健康安全保障局(HSA)は6月22日、数十年ぶりにロンドン市内でポリオ(急性灰白髄炎・小児まひ)の原因となるポリオウイルスが検出されたことを明らかにした。

ポリオの感染が拡大する危険性は低いとしながらも、国家的な有事であることを宣言するとともに、対策チームを組織。ワクチンの接種を呼び掛けている。

ポリオウイルスは今年2月から6月にかけて、ロンドン北部と東部の下水から採取した複数のサンプルから検出されているという。英国では2004年以降、経口生ポリオワクチンではなく不活化ポリオワクチンが使用されているため、HASはこのウイルスについて、国外で経口生ポリオワクチンの接種を受けた人から排出された可能性が最も高いとしている。

また、HSAによると、下水から少量のポリオウイルスが検出される例はここ数年の間に、ほかにも何度か報告されている。ただ、いずれも1回の検出であり、それぞれの間に関連性は認められていなかった。

だが、今年2月以降にロンドンで検出されたウイルスは近縁であることが確認されている。これが示唆するのは、「密接な関係にある個人の間で感染が広がった可能性があるということだ」という。

現在のところ、英国内でポリオの感染や、感染の兆候を示す症状は報告されていない。保健当局は、ワクチン由来のウイルスによって感染が拡大するリスクは、非常に低いと説明している。

ポリオは咳やくしゃみよりも、主に感染した人の排泄物との接触によって、感染が拡大する。ワクチン接種を受けていない人が感染した場合には、まれではあるものの、まひを起こすことがある。英国で最後に野生株のポリオウイルスへの感染が確認されたのは、1984年。2003年には、ポリオの根絶を宣言している。

ロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院の小児科の医師は、「英国は島国だが、世界から孤立しているわけではない。海外から病気が持ち込まれる可能性はある」と指摘。

「下水からワクチン由来のポリオウイルスが検出されたことは、それを証明するものだ」と述べ、ポリオの予防接種を受けていない人、特に子どもは接種を受けるべきだと訴えている。

「根絶」後に感染者が増加


経口生ポリオワクチンの接種を受けた人の腸内ではポリオウイルスが増殖し、排泄物とともに排出される。下水から検出されるのは、こうしたウイルスだとされている。

ワクチン接種により、世界ではすでに多くの国が、ポリオの根絶を宣言している。だが、その一方で、ワクチン由来のポリオの感染者は複数の地域で増加している。一部の国でいまも、弱毒化したウイルスを使用する経口生ワクチンの接種が行われていることが、関連しているとみられている。

過去数年、アフリカ、中東、アジアの一部の国でワクチン由来のポリオへの感染例が報告されたが、それらの中には、すでに根絶を宣言していた国も含まれている。専門家らは現在、感染リスクを減らすため、新たな経口生ワクチンの開発に取り組んでいる。

編集=木内涼子

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