サル痘について人類が他のポックスウイルスから学べること

我々は人畜共通ポックスウイルスが感染力の高いヒト病原体へと変異する可能性を警戒しなくてはならない。すでに危うい現在の医療システムに、準備のできていない世界的パンデミックにこれ以上巻き込まれる余裕はない(Getty Images)

1980年の天然痘根絶以来、次のポックスウイルス・パンデミックに対する準備ができていないことへの懸念が高まっている。人類の歴史で天然痘が何百万もの命を奪ったことを決して忘れてはならない。

天然痘の原因である天然痘ウイルスは、致死力が高いことに加え、非常に感染力が強い。感染者から放出された飛沫を吸い込むことが、サル痘感染の主要な経路だが、ウイルスは汚染された物体や表面に直接触れることによっても拡散する。症状は、筋肉痛や頭痛、発熱などインフルエンザに似た症状から始まることが多い。発症が拡大すると消化管に影響が表れることが多く、吐き気、嘔吐、強い腰痛などを起こす。

他のウイルス感染と同じく、これらの症状のほとんどは2〜4日間続く。発症から20日目頃、皮膚に目に見える病斑が発現する。発疹は喉、口、および舌の粘膜にまずあらわれる。拡大した膿疱が破裂すると、大量のウイルスが放出され、他の皮膚細胞に次々と感染する。致死率は感染した天然痘ウイルス株の種類によって1〜75%の間となる。

現在、我々はヒトのポックスウイルス感染の復活を目の当たりにしている。天然痘を予防するためのワクチン接種を廃止したことによって、世界人口の大部分が、ウサギ痘、シカ痘、そしてサル痘をはじめとする、その他のオルソポックスウイルスによる残された脅威に対する免疫をもっていない。天然痘がヒトだけに感染するのに対して、ポックスウイルスの多くは本質的に人畜共通である。最初にサル痘のヒト症例が発見されたのは1970年で、場所は現在のコンゴ民主共和国だった。初期の研究では、サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染は散発的だと報告されていた。しかし、人間が熱帯雨林やジャングルに接する機会が増えるにつれ、ヒトのサル痘感染は中央および西アフリカのいくつかの地域で風土病化した。
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翻訳=高橋信夫

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