彼が率いるオーケストラ団体「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」は、2021年に法人化し「Japan National Orchestra株式会社」(JNO)となった。メンバーは、国内外で活躍し、将来的にその地位を嘱望される若いアーティストたちで構成されている。
異例のオーケストラの株式会社はなぜ誕生したのか。JNOを「秘密結社」と表現する反田恭平が野望を語った。
──オーケストラ団体「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」を設立したきっかけを教えて下さい。
2018年に8人のダブルカルテットを作り、翌年に管楽器を入れてMLMナショナル管弦楽団を設立、2021年にジャパン・ナショナル・オーケストラに改名しました。
とりわけピアニストは、1人で完結してしまうこともあり、室内楽をやらない限りは奏者の中でも最も孤立した存在じゃないかと思います。
でも僕は、元々みんなと一緒に何かをつくりあげたりすることが好きで、室内楽も大好きでした。
どうしても室内楽というとオーケストラとも違い、地味なイメージなのか、動員も厳しいという雰囲気がありました。そこで、「バリバリに弾ける集団をつくったら面白いのでは?」「お客さんだけでなく、自分たちも他人と切磋琢磨し、お互いを鼓舞できるような環境で演奏するとどうなるのか」と思い、周囲に声をかけはじめたのがきっかけです。
──2021年には法人化しました。その狙いは。
パンデミックによって、学生は、勉強する機会も奪われ、すべての演奏家の活動の場所がなくなってしまったことが一番の理由です。
「音楽」という職業で食べていくことができなくなり、バイトをしないといけないという状態の人も出てきました。もともと不安定な職業ではありますが、音楽のことを考える前に明日の生活のことを考えるという日々。
特にジャパン・ナショナル・オーケストラのメンバーは学生が多いですし、そもそもこのパンデミックの先が見えない状態がいつまで続くかわからない。という状態をどうにかしなくてはという思いもあり、メンバー個々人から「今何が一番大変なのか」をリサーチしていきました。
その結果、もっと自由に音楽だけのことを考えられる場所、空間をつくりたいと思いました。生活の心配をせずに音楽の没頭できる場所、それが「Japan National Orchestra」です。DMG森精機(奈良県創業の工作機械大手)さんともご縁があり、株式会社の設立につながりました。
JNOでは、オーケストラのメンバーが社員になっています。入社条件はひとつ。「奈良と東京で毎年リサイタルをやってほしい」ということのみです。