円形脱毛症に画期的な飲み薬 イーライ・リリーのリウマチ薬、FDAが適応承認

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米食品医薬品局(FDA)は6月13日、イーライ・リリーのリウマチ薬「オルミエント(一般名バリシチニブ)」を重症の円形脱毛症の治療薬として承認した。米国で円形脱毛症の全身療法剤が承認されたのは初めて。一部の患者に大きな効果が確認されており、精神的な苦痛も大きいとされるこの病気に悩む人にとって朗報になった。

円形脱毛症は自己免疫疾患の一種で、重症の場合は頭髪全体、さらに眉毛やまつ毛まで抜けてしまう。鼻や耳の中の毛すら抜けることもあり、その結果、鼻炎や聴覚障害を引き起こすおそれもある。米国ではおよそ30万人の患者がいる。

円形脱毛症の患者には、身体的症状に加え、大きな精神的苦痛にも苦しめられる人が多い。ある医師は「円形脱毛症は患者からその人らしさを奪ってしまう」とニューヨーク・タイムズに語っている。

オルミエントは4年前に関節リウマチの経口治療薬として承認された。円形脱毛症の治療に使うことは当初は想定されていなかった。

臨床試験(治験)の結果は5月5日に医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表されていた。それに添付された患者6人の頭部の写真を見ると、オルミエントが円形脱毛症の治療に劇的な効果をあげていることがひと目でわかる。その多くは投薬を始めてから8〜9カ月後、元のふさふさの髪にほぼ戻っている。

円形脱毛症は、毛をつくり出す毛包という器官をなんらかの理由で免疫系が攻撃することで起こる。オルミエントは発症にかかわるヤヌスキナーゼ(JAK)と呼ばれる酵素のはたらきを阻害することで、毛包の回復を可能にするとみられる。

ただ、すべての患者に同じように高い効果がみられたわけではない点には留意する必要がある。行われたふたつの試験では、8カ月後に髪がいちじるしく回復した人の割合は、オルミエントを多めに投与した群でそれぞれ約36%と約39%だった。投薬量が少ない群ではその比率はもっと低くなる。

試験での副作用はおおむね軽度だったが、長期的な副作用がみられないか引き続き観察を続けるという。

いずれにせよ、オルミエントが円形脱毛症の画期的な治療薬なのは間違いない。ネックになるのはやはり価格だろう。米国で売られる薬については珍しいことではないが、オルミエントも相当高価だ。

ニューヨーク・タイムズによると、オルミエントの現在の価格は1カ月分2500ドル(約34万円)で、8カ月治療を受けると2万ドル(約270万円)かかる計算になる。FDAによる承認のおかげで、今後は保険の適用対象になる見込みだ。

編集=江戸伸禎

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