DAOは分散型で自律型というコンセプトは分かっても、中身はブラックボックスだと感じている読者も多いはずだ。机上の空論だけでないのか? 本当に想定通りに運営されているのだろうか? そう疑いの目を向ける人も多いはずだ。実際のところ、DAOは現在も試行錯誤の過程にあり、日々進化している。
著者は米カリフォルニア州サンフランシスコのWeb3業界で6年近く働いているが、DAOの発展を日々肌で感じている。今回のコラムでは、DAOで働くとは一体どういうことなのか、また現在見えている課題などをご紹介したい。
DAOが有望な若者の転職先に
著者はサンフランシスコの金融街のカフェにて、とあるDAOでフルタイムで働く青年と待ち合わせをしていた。某投資系DAOのDiscordチャネル(DAOのメンバー間のコミュニケーションによく使われているチャットプラットフォーム)で、特に活発に活動しているこの青年とバーチャルで知り合い、たまたまサンフランシスコにしばらく滞在するということでオフラインで話を聞くことになったのだ。
その青年は、20代後半の米国人。米アイビーリーグ系の一流大学を卒業後、投資銀行に勤務し、プライベート・エクイティ業界に転職。その後、DAOで働く友人の誘いでこの某DAOでフルタイムの職を得たという。
日々の仕事は、投資先Web3スタートアップの発掘、DAOコミュニティ内でのデューデリジェンス(経営状況や財務状況の調査)のファシリテーション、投資契約の管理、新しいDAOメンバーのオンボーディング対応など多岐にわたる。実際DAOに飛び込んでみて、Web3にフルコミットできるこの環境にとても満足していて、毎日がとても楽しいとキラキラした目で語っていた。
「DAOで働く」ことが普通になる社会が遠くない将来にくるかもしれない、ということが言われてしばらく経つが、実際その動きは世界のあちらこちらで少しずつ起き始めている。
開発者が片手間にDAOの開発案件に貢献してバウンティ(報酬)をもらう、ということであれば想像しやすいが、先に述べたような、伝統的な業界でエリート街道をまっしぐらに進んでいたような若者がこの世界に飛び込み始めている。もちろん、米国でもまだまだ少数派ではあるものの、この青年が生き生きと「DAO就職」を語る様子はとても印象に残った。