DAOが新たなキャリアオプションに?〜DAOで働くとはどういうことか?

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3つ目は、DAO組織の運営を効率化するためのさまざまなツールやインフラの必要性だ。例えば、DAOの財務管理のためのソフトウェアやDAOメンバー間のコラボレーションを容易にするためのツール、DAOのガバナンス投票ツールなどが急ピッチで開発されており、シリコンバレー有数のベンチャー投資会社(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)などは積極的に投資を行なっている。

4つ目はDAOの法的な位置付けについての規制整備だ。米国ではワイオミング州が他に先駆けてDAO法案を可決し、DAOが法人を作ることが可能になったが、DAOがどのような場合に法人化すべきか、また税の取り扱いなどについての不明確な部分も多い。また日本ではそもそもトークンに対する税制に問題があり、DAOの運営そのものが難しいのが現状だ。今後、DAOがスケールしていくためには、世界である程度統一された法的なフレームワークや税制が望まれる。

最後に、DAOで働く個人が仕事として安心して取り組めるようになるためには、個人での会計管理、税申告、福利厚生面などでのインフラの整備が必要となり、このニーズに応えるためのサービスを開発するプロジェクトも出現してきている。

DAOが解き放つ人類の可能性


DAOはまだまだ始まったばかりだ。DAOはすべての株式会社組織を代替するなどといった考えは現実的ではない。これまで営利事業は株式会社などといった特定の組織体制しかオプションがなかった中に、新たな、より分散型のオプションが増えたという認識、位置付けの方がより正しいだろう。

事業内容によっては株式会社のほうが適している分野もあれば、DAOの特徴が生きる分野もあるだろう。DAOが株主や従業員以外のステークホルダー(ユーザーやパートナーなど)に対してもインセンティブを与えるという特徴を考えると、特にさまざまなステークホルダーのきめ細やかな利害調整が必要となるような事業や活動においてはDAOが特に本領を発揮するだろう。

DAOがメインストリーム化するためには越えなければならない障害がたくさんある。しかし、コンピュータが1台あれば、世界のどこにいようが、DAOに参加でき、自分のスキルを武器に仕事をして報酬を自分のウォレットにトークンという形で直接得ることができ(銀行口座も不要!)、その組織のガバナンスにも参加することができるというDAOの仕組みは、長期的に人類の可能性を大きく解き放つと思う。

例えばアフリカの貧しい地域に住んでいる人でも、特定のDAOが必要とするスキルを持っているかもしれないし、豊かな地域に住む人でも、実名だと発揮できなかったスキルが偽名経済の中で開花する、といったこともあるだろう。大袈裟かもしれないが、DAOは人類の経済活動の枠を広げ、それは実経済にも影響を及ぼしていくのだろうと思う。

社会に羽ばたく若者の有力なキャリアオプションの一つとしてDAOが位置付けられる日もそう遠くは無いかもしれない。

連載:米国発、次世代金融動向を読み解く
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文=吉川絵美

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