DAOが新たなキャリアオプションに?〜DAOで働くとはどういうことか?

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さらに、トークンホルダーとして、さまざまなガバナンス案件に投票をしたり、Discord上で議論に参加したりすることができる。または、そのDAOが提供するサービスのユーザーとしてコミュニティに関わることもできる。

人によっては複数のDAOをパートタイムで掛け持ちしている人もいれば、プロジェクトベースで期間限定で働く人もいるし、または特定のDAOにコミットしてフルタイムで働きたいという人もいる。これまでの伝統的な組織で上を目指すキャリア形成とは異なる、自分独自のキャリアをデザインすることが可能だし、トークン報酬を通したインセンティブによって、参加するDAOと自分の利害を一致させることができる。

また、DAO同士で仕事を受注し合って、お互いのトークンを付与して持ち合う、という取り組みも自然発生しており、DAOが協力し合う生態系もでき始めている。日本型経営の「株の持ち合い」を連想させる動きに感じるのは私だけではないだろう。

DAOにはまだ課題が多い


このように、日々進化するDAOだが課題は多い。というか、課題だらけだ。

まず1つ目は、DAOの組織運営モデルのベストプラクティスが模索されている段階であるということ。分散型を標榜しつつも、まずは少人数から中央集権型でスタートして、徐々に分散化されるケースが多いが、どのタイミングで、どのように分散化されるべきかについてはさまざまなプロジェクトが試行錯誤している。また、トークンの保有量のみをベースとした投票による単純なガバナンスモデルは弊害も出てきており、参加者のコミュニティへの貢献度を何らかの方法で評価し、分散型IDと紐づけることで、投票力に反映させるといった新たなガバナンスモデルも議論されている。

また、DAOが大きくなると、特定の組織機能がギルド化して、各ギルド内でガバナンス体制が築かれるなど組織構造が複雑になる。分散性を保ちながらスケールできるDAOの組織体制の在りかたについては今後も引き続き大きな研究テーマとなるだろう。

2つ目は、DAOで働きたい人と、人材が必要なDAOを効率的にマッチングする仕組みの必要性だ。DAOの数が増え、かつDAOで働いてみたい人が増える中で、DAOの仕事をリスティングする専門のジョブサイトもできているが、通常の組織への就職とは異なり、偽名(または仮名)で参加する人たちの本当のスキルを評価して適切な仕事とマッチングする仕組みが必要とされている。

DAOの仕事がしたくてDAOに押しかける人は多いが、仕事をやらせてみたところ、必要とされるスキルをもっておらず、仕事が完遂されなかったというような事例は後を絶たない。DAO上での仕事のトラックレコードを認証する仕組み作りが進んでおり、これらの認証基盤を利用してDAO社会でのスキルポートフォリオを構築していくことが必要になる。

スキルや経験を客観的に分散型に実証できる仕組みを搭載する、いわば“DAO版LinkedIn”の構築に取り組むスタートアップも複数出てきている。
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文=吉川絵美

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