STORY 7 ハイジ・ロイゼン (ベンチャーキャピタリスト)
スティーブとさまざまなやりとりをした私に言わせれば、彼との仕事は「人間としての鍛錬」。大変なことも多かったけれど、心と心が触れ合った、と感じる経験をしたこともあります。
1989年5月のこと。スティーブから交渉案件に関する電話がかかってきました。私は、前日に父が急逝したという連絡を受け、悲しみのどん底にいたのですが、相手はスティーブなので、なんとか電話に出たのです。父のことを話すと、「なんで仕事なんかしているんだ。早く家に帰らないと。すぐ行くから、待っていろ」と。
家にはソファもあったのですが、彼はソファに座るのが嫌いなんですよね。私に、父のことを話して、と言いました。父のことをどれだけ思っていたのか、といったことです。スティーブのお母様が数カ月前に亡くなっていたこともあり、私が言葉にする必要があるようなことを、わかっていたのだと思います。