また、環境面での整備としては、2018年から都営地下鉄大江戸線の電車の車両の一角に「子育て応援スペース」が設けられている。これは保育所や通学のために電車を利用する親子が「邪魔だ」などと罵倒されたり、バギーを蹴られたりしたなどの経験から、危険で電車が利用できないと訴えた母親たちの声を受けて、東京都が動いたものだ。
「きかんしゃトーマス」や人気絵本のキャラクターなどが壁に大胆に施され、子どもたちには大人気となっている。周囲の乗客にも温かく子連れを見守るよう啓発にも繋がっている。東京都では大規模調査をした結果、7割以上の電車利用者からスペースを歓迎する意見を得たことで、今年度から都営地下鉄全線に本格展開し、乗り入れする民間線でも走り始める。親子連れが移動しやすい社会を目指しているそうだ。
また龍円さん自身もダウン症のお子さんを育てながら議員を務めておられ、みんなで楽しむことができる「インクルーシブ公園」などさまざまな施策や活動に携わっている。
インクルーシブな環境づくりを実践
龍円さんも話していたインクルーシブな環境づくりに関して、まさにその取り組みをしている柿の実学園の小島澄人園長、sukasuka ippoの五本木愛代表、デコボコベースの松井清貴取締役副社長がディスカッション形式で対談するイベントを取材した。
(左から)デコボコベースの松井清貴取締役副社長、柿の実学園の小島澄人園長、sukasuka ippoの五本木愛代表
柿の実学園の小島園長は、創立から延べ1500人ほどの病気や障害のある子どもの受け入れを、学園では行ってきたという。「みんな違ってみんないい、同じ空間で同じ空気を吸って楽しくやろうよというイメージで、特別支援の子どもたちを受け入れています」と語った小島園長は、たくさんの子どもの受け入れをしてきて感じることの1つとして、就学問題を挙げていた。
その問題については横須賀でインクルーシブ学童を運営するsukasuka ippoの五本木代表も自身の経験もふまえ次のように付け足した。
「私自身も(兄弟が通っている)幼稚園に、障害のある娘を週1でもいいので通わせてほしいと頼んだところ『心配しないでいい。一緒に育てていこう。何日来たって構わない』と言ってくださったことを思い出しました。いまでも感謝しかないです。あの時、地域に受け入れてもらえた、それがいまの事業の根本にもなっています。」
私自身もそうなんですが、すみません迷惑かけてという気持ちが強くなってしまう場合があります。いろいろなところで断られて、そういう心持ちになれないこともすごくわかるのですが、親自身も自分のなかに勇気が必要だと、自分も含めて思っています」