大手IT企業の元取締役が、須磨海岸にたった5坪の書店をオープンしたワケ

自由港書店の店主・旦 悠輔(だん ゆうすけ)


実は、自分が欲しい情報が探せたり、誰かに紹介してもらったりという、インターネットの原点が書店にはあります。世の中には、愛読する人の数は少なくてもファンにとってはかけがえのない作家、そして、そういった作家を支える小さな出版社がたくさんあります。そうした作家が執筆した作品と出会えるのは、ふと立ち寄った書店で手にしたり、店主から勧められたりしたときです。

いまは全国の個人経営の書店は、ネットで緩くつながりあっています。自由港書店も、先日、広島の尾道にある書店さんからCDを仕入れさせていただきました。小さな書店というのはウェブがなければ、孤島にあるのと同じで、作家や出版社、顧客ともつながれません。

書店のような地域や人の心に根差した『小さな商い』だからこそ、ネットによって新しい可能性が見出せるのです。このような草の根の領域で、力を発揮するのが本来のインターネットだと強く思っています」

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旦の語り口は穏やかではあったが、いまのネット社会が向かおうとしている道に警鐘を鳴らしている。その発言からは、ネットはあくまで現実の世の中を豊かで暮らしやすくするための道具に過ぎないはずだという、彼の強い信念を感じた。

そんな旦だが、今年4月から週に1日、神戸市役所の市長室広報戦略部で仕事をしてもらっている。行政においても、ウェブ活用が急速に拡大するなかで、現実の社会や活動とのバランスを考えなければならない。彼の経歴と考え方は市政へのアドバイス役として適任であると神戸市が白羽の矢を立てたのだ。

自らの経験と信念をうまく生かしながら、書店店主、パートタイム公務員、そしてITコンサルタントと3つの顔を持っている旦のこれからの活動に期待したい。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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