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大手IT企業の元取締役が、須磨海岸にたった5坪の書店をオープンしたワケ

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自由港書店の店主・旦 悠輔(だん ゆうすけ)

コロナ禍をきっかけに、人口が密集し、生活コストが高い東京から離れる人たちが増えている。総務省が公表した住民基本台帳に基づく人口移動報告では、2021年に東京23区からの転出がはじめて転入を上回った。

ヤフーの動画配信サービス「GYAO!」を運営する株式会社GYAO(ギャオ)の取締役を務めていた旦悠輔(だん・ゆうすけ、42歳)が、昨年5月、神戸市内の閑静な住宅街の一角に「自由港書店」という5坪の小さな書店をオープンした。


書店入り口には灯台をモチーフにした明かりが

店は須磨海岸から歩いて3分の場所にある。須磨海岸といえば、神戸の繁華街である三宮から電車で西へ15分でたどり着く白砂青松の海岸だ。温暖な気候と風光明媚で知られるこのあたりは、平安時代から京の貴族の隠居先として人気を集め、源氏物語の舞台にもなった。

そんなところに、大手IT企業の幹部を辞した人が書店をつくったと聞けば、東京での仕事に追われる生活に疲れて、この地で解放されたかったのではないかと、誰もが思い浮かべるかもしれない。

ところが、彼に話を聞くと「そもそもこれまで関わってきたインターネット自体が、このような本屋に近い役割を担っていました。なので、自分としては原点回帰しただけです」と意外な言葉が返ってきたのだ。彼が何を考え、どこを目指しているのか聞いてみた。


白砂青松の須磨海岸

インターネットの根源的な力とは


旦は、子どものころから本や映画が好きだったという。だが、大学を卒業したとき、出版や映画の業界ではなく、IT業界を仕事の場に選んだ。

「ちょうど就職した2002年は、インターネットという新しいツールが世界に広がりはじめたころでした。世界中に無料でアクセスでき、誰もが自由に発信できる。さらに、同じ思いを持つ人間同士が簡単につながることができる。インターネットの登場で世界が大きく変わると思いました」

そこで旦は、まず外資系のコンサルティング会社で働いたあと、動画配信サービス「Yahoo!動画」を運営する新会社「TVバンク」に転職する。同社は、動画配信で先行していたUSENが運営する「GyaO」に対抗しようと、ソフトバンクとヤフーが設立した会社だった。

ところが、2009年にヤフーがギャオを買収。すると旦は、自らの意思でギャオへの転籍を決断し、社長室長を務めた。そして、同社が急成長期を迎えた2012年、32歳という若さにもかかわらず、ギャオの取締役へと抜擢されたのだ。
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文=多名部重則

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