ドイツのハーベック経済相は19日、減少しつつある天然ガスを節約するために、政府がこの夏、休止中の石炭火力発電所を再稼働させる計画であることを明らかにした。「天然ガスの消費を減らすには、発電に使うガスを減らさなければならない」とハーベック経済相は指摘し、「代わりに石炭火力発電所を今以上に使わなければならない」と述べた。
ハーベック経済相は、このところのドイツのエネルギー関連危機の原因として、ロシアがパイプラインシステム「ノルドストリーム1」で欧州への天然ガス供給を削減することを決めたことを指摘した。
ハーベック経済相は、きたるべき冬に備えて国内の天然ガス貯蔵施設を再充填することが目標になると説明し、「さもなければ、冬には本当に逼迫する」と述べた。ドイツの天然ガス貯蔵量は現在57%と歴史的低水準にある。
一方、米ニューヨークタイムズが19日に報じたところによると、フランスでは原子力発電の能力が大幅に低下しているため、今夏停電の可能性に直面している。フランスの電力は通常、3分の2以上が原発で賄われており、フランス電力公社(EDF)を通じて他の欧州諸国へ輸出さえしている。
EDFは異常レベルの停電の原因を猛暑、そして老朽化した一部の原発で「謎の応力腐食が発生した」ためとしている。原発の多くは当初の予定耐用年数を超えて稼働している。
EDFはすでに430億ユーロ(約6兆1190億円)の負債を抱え、最近ロシアの原発事業者ロスアトムと締結した取引によって負債水準が上昇しようとしていることから、フランス政府は財政破綻を避けるためにEDFの国有化を検討中だ。
ドイツ政府は近年、自国の原発「問題」を解決するために、原発をすべて廃炉にすることを選択した。これによりドイツは2021年夏から、多額の補助金を注入した風力発電が約束どおりに稼働しなくなると、眠っている天然ガスや公害性の高い石炭の発電所を再稼働させるより他にないという状況になっている。
もちろん、ドイツをはじめとする欧州西側の国々には、エネルギー安全保障を強化するために自国の鉱物資源の利用を拒否してきたため、天然ガスと石炭の大半を輸入しなければならないという弱点がある。こうした国々は、バイデン氏が米大統領になる以前から、輸入頼みは明らかに安全保障上のリスクだと一貫して米国から警告を受けていたにもかかわらず、最も近くて安価な供給源であるロシアに化石燃料を頼ることにした。