新たな体験の提供を「妥協しない」
「iPadが提供する操作の円滑さや反応性に関しては、絶対に守らなければならない基準がある。タッチ操作であれば、ユーザーは指を置いた瞬間に反応が得られなければデバイスとのつながりを感じることができない。ユーザーが期待する反応性を実現するハードルは非常に高い。デバイスの処理能力とグラフィック性能のバランスを取りながら、アプリが何個までならリアルタイムで応答し、高い反応性を実現できるかを確認している」とフェデリギは述べた。
「ユーザー体験の観点からも、隠されたウィンドウを探したり、管理する必要がないようにしたいと考えた。Macユーザーで、多くのウィンドウを開いている人であれば、隠れたウィンドウが増え、常に移動させたり、隠すウィンドウを選んだりしたことがあるだろう。我々は、iPadではこれを完全に自動化し、ステージ上にある全てのウィンドウに同時にアクセスできるようにしたいと考えた。4つのウィンドウであれば、自動的に移動させ、全てのウィンドウにアクセスできるようにすることができる。結果的に、非常にバランスの取れたソリューションになった」とフェデリギは話す。
この新機能は、最新のiPad ProとiPad Airにのみ実装されている。アップルは、基調講演でこの点を強調し、セクションの冒頭でも新機能がM1チップ搭載のiPad専用であることを説明した。筆者はフェデリギに対し、Stage ManagerをM1チップ搭載モデルに限定した理由を尋ねた。彼が述べた最初の理由は、「反応性の高いユーザー体験を維持するため」というものだった。また、Stage Managerには、M1チップを搭載したiPadで使用している高速の仮想メモリスワップが必要だという。アップルは、Stage Managerを他のiPadでも使えるようにしようと試みたのだろうか?
「プロトタイピングを開始してすぐに、私たちが設計したユーザー体験を提供できないことが明らかになった。新しい体験を全てのデバイスで提供できるのがベストだが、そのために新しい体験の定義を妥協することは避けなければならない。今回は、M1チップをベースとすることでしか実現できなかった」とフェデリギは言う。
iPadには昨年も大きなアップデートがあったが、今年はより重要な年になりそうだ。「機能によっては、開発に数年を要することがあり、我々が一生懸命取り組んでいるものについては、毎年が重要だと言える。Stage Managerのような機能は、準備に長い時間をかけ、あるタイミングで大々的にリリースする。これまで我々が時間をかけて開発してきた機能を全て世に出せてこられたことは喜ばしいが、今年がiPadにとって特に重要な年であることは確かだ」とフェデリギは語った。