経営者が座右の書とする漫画作品を紹介する連載「社長の偏愛漫画」。自身の人生観や経営哲学に影響を与えた漫画について、第一線で活躍するビジネスリーダーたちが熱く語ります。
第2回目は、日本最大級の音声プラットフォーム「Voicy」を運営するVoicy代表取締役CEOの緒方憲太郎が登場します。聞き手を務めるのは、漫画を愛してやまないTSUTAYAの名物企画人、栗俣力也。
複数分野の掛け算でソリューションを生む、全員主役の群像劇
栗俣力也(以下、栗俣):漫画を読み始めたきっかけは?
緒方憲太郎(以下、緒方):小学生のときに、近所のお兄ちゃんが読まなくなった「ジャンプ」をくれるようになったんですよ。読まなくなった「ジャンプ」5〜6冊まとめてドーンと、ウチのオカンがもらってきて、それを読むところから始まりました。僕は1980年生まれなんですけど、桂正和さんの『電影少女』が出てきて衝撃を受ける年齢でした。
あとは、友人が貸してくれる漫画を読んでいました。ウチは漫画を買ってもらえなかったので、漫画は借りるものだったんですよ。「読み終わったマンガを貸してあげる」と、友人から紙袋に全部入った『タッチ』と『H2』が来た。それであだち充先生の作品にめっちゃハマって、『陽あたり良好!』から『ラフ』『虹色とうがらし』『ナイン』と、全部読んでいきました。
あだち充作品を読み始めたら、親も横で読み始めて「漫画って面白いね」と言い始めた。親は教育的なものしか読ませてくれなかったんですよ。昔は『まんが日本の歴史』しか家になかった。あれは、僕は漫画としては認めていません(笑)。
そのあと、手塚治虫に傾倒していきました。親も好きだったので、読ませてもらえたんです。『ブラック・ジャック』『ブッダ』『火の鳥』から入って『どろろ』へ。初めは親の管理下で、ある程度健全なものを読むところからスタートしました。
中学生になると、電車に乗って遠くのコンビニで立ち読みをするようになりました。当時は店内で立ち読みができる時代でした。
そこで月曜日に「週刊少年ジャンプ」と「ヤングマガジン」、火曜日に「ビッグコミックスピリッツ」と「週刊少年サンデー」と「週刊少年マガジン」、水曜日に「週刊ヤングジャンプ」と「モーニング」と「週刊少年チャンピオン」、金曜日に「ビッグコミックスペリオール」を読む。コンビニでの立ち読みに、学生生活のかなりの時間を費やしていましたね。
漫画家で最初に好きになったのは、あだち充さんです。作品では『タッチ』ですね。
昔はスポーツ系が好きでしたが、だんだんヒューマン系を読むようになったり。好きな漫画のポイントは、設計です。映画もそうなんですけど、近年好きなのは「TENET」や「インセプション」、「マトリックス」。設計自体がいい世界を設定して、普通の人が考えていないところをやるのが面白い。
冨樫義博さん(『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』『レベルE』など)の設計も好きだし、岩明均さんの『寄生獣』も好きです。今までにない新しい設計を埋めこんだ人たちは、面白いと思います。