複数のアイテムを瞬時にスキャンできるMashginのセルフレジは、包装された商品はもちろん、皿に盛られた食品などを識別することが可能で、小売店やスタジアムの売店、カフェテリアなどで、従来のレジに比べて最大10倍速く支払いを済ませることができるという。
「当社のテクノロジーを導入した店舗は行列を解消し、売上を大きく伸ばしている」と同社のCEOのスリヴァスタヴァは語る。
フォーブスが北米の最も有望なAI企業を選出するリストの「AI50」に選出されたMashginは、5月9日、NEAが主導したシリーズBラウンドで6250万ドル(約81億円)を調達したことを発表した。同社の評価額は15億ドルとされた。
累計7500万ドルを調達したMashginは、すでに黒字化を果たしており、2021年の収益は約1400万ドルだった。現状20名の社員を抱える同社は、新たな資金で採用を強化し、欧州進出を目指すという。
2013年にMashginを設立したダンカルとスリヴァスタヴァは、共にインド工科大学デリー校で学び、卒業後は別々のキャリアを歩んだが、シリコンバレーで再会したという。彼らは創業当時に、コンビニエンスストアの全商品の写真を撮影して、商品画像のデータベースを構築した。
それから約10年が経った今、この分野の競争は加熱している。H&Mが導入したスマートミラーは、買い物客が音声で指示をすれば、自撮り写真を撮ることができる。また、アマゾンのスマートショッピングカートは、コンピュータビジョンを使って商品をスキャンすることで、レジ精算を不要としている。
さらに、2021年にはインスタカートがチェックアウト技術プラットフォーム「Caper AI」を買収し、テルアビブ本拠の「Trigo」や「Shopic」は、VCから多額の資金を調達している。調査会社ジュニパーリサーチは、スマート・チェックアウト市場が、2025年までに4000億ドル規模に成長すると予想している。
スタジアムの売店などで活躍
その一方で、セルフレジの普及により、店舗従業員の多くが職を失うことが懸念されている。しかし、Mashginの創業者たちはAIが職を奪うのではなく、全国的な人手不足を補う役割を果たすと考えている。
「Mashginを導入することで、従業員たちは自動化できない業務に集中することができる」とスリヴァスタヴァは話す。
1台あたり月額約1000ドルで利用できるMashginのセルフレジは、15分で設置が可能という。同社のレジは、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンやカンザスシティのアローヘッド・スタジアムなど、全米の主要なアリーナの売店に置かれている。また、各地の空港や、テキサス州にあるDelek USが運営するコンビニエンスストアにも導入されている。