KSEの食糧・土地利用研究センターのチームがまとめた報告書によると、被害の内訳は▽農地および未収穫の冬作物=約21億ドル(約2800億円)▽機械類=約9億2600万ドル(約1250億円)▽貯蔵施設=2億7200万ドル(約366億円)▽家畜=1億3600万ドル(約183億円)──などとなっている。
戦争の影響で240万ヘクタール分(約14億ドル=約1900億円相当)の冬作物が収穫不能になったとみられている。
米農務省のデータによると、ウクライナは小麦の輸出で世界5位、トウモロコシで4位、ヒマワリ油やヒマワリかすの輸出では世界首位だった。だが、この戦争が始まった直後からロシアによる黒海の海上封鎖が原因で港湾活動の停止を余儀なくされており、国連の推計では収穫済みの穀物2000万トンが輸出できなくなっている。
ウクライナ政府は5月、穀物輸出量が前年の同じ時期に比べ64%落ち込んでいると見積もっている。
KSEの研究センターの専門家は、ロシアの侵攻によってウクライナでは「世界で年間4億人分」の農産物の輸出能力に影響が出ていると指摘。「失われた資産の復旧」が進まないかぎり、ウクライナが再び世界的な食糧供給国としての役割を果たすのは難しいとの見方を示している。
報告書では、ロシアの侵攻による被害が原因でウクライナ経済は45%縮小するとの見通しにも言及。KSEは5月、ロシアの侵攻によるウクライナの被害はインフラの損害920億ドル(約12兆円)など合計で最大6000億ドル(約80兆5000億円)に達すると発表している。
ジョー・バイデン米大統領は14日、ウクライナ国内に留め置かれている穀物2000万トンを動かすために、欧州のパートナーと「緊密に連携」していると語った。