初日のセッションの一つに、アップルのiPod部門でシニアバイスプレジデントを務め、現在は投資家・起業家として活動するトニー・ファデルが登壇。「Making Things Worth Making(つくる価値のあるものをつくる)」と題したセッションにおいて、サステナビリティを重視する自身の考えを示した。
スマホは「意図しない結果を招くこともある」
誰もが知るiPodとiPhone。ファデルは、アップルでiPod(18世代)とiPhone(3世代)の開発チームを率いていた。これらのプロダクトは、TIME誌が選ぶ「史上最も影響力のあるガジェット50選」(2016年)にも選ばれている。
セッションでは冒頭、インタビュアーが「今iPhoneを持っている人、もしくはiPhoneを持っている知人がいる人はいますか?」と会場に質問。多数の手が挙がると、ファデルは笑顔を見せた。
ファデルは、世界で数十億人がiPhoneを含むスマホを使用する現状について、「人々が思いもよらない情報にアクセスできるのは、驚くべきこと。スマホは世界を変えるモノである」と評価。
一方で、スマホの普及が「意図しない結果を招くこともある」と警鐘を鳴らした。それは、近年問題となっているデジタル中毒のことである。ファデルは、過去にテレビ番組に出演した際、アップルに対して「スクリーンタイムツールのようなものが必要だ」と提言し、その後同社がこの機能を導入したというエピソードを披露した。
また、人々の不安をあおる、AIやロボットが人間の仕事を奪うという“未来予言”の話になると、ファデルは「そんなことは心配していない」と断言。本当に恐れているのは、今世界中で起きているフェイクニュースの拡散であると明かした。
最新のiPhoneは持っていない
現在は投資家としても活動しているファデルは、カンファレンス開催地であるフランスの企業に、200以上の直接投資をしている。特に「地球や社会に良い影響を与え、人々を助ける破壊的なテクノロジー」を対象としているという。
ファデルが率いるファンド「フューチャーシェイプ」が投資した企業の一部(カンファレンスのスライドより)
「地球を劇的に改善できる企業を探している」と投資のスタンスを語るファデルは、実は最新のiPhoneを持っていないという。