「戦争が精神衛生に悪影響を与えるということ、その影響で治療を必要とする人がどれくらいいるかは政府も理解している。そして、待っている時間がないということも」。リャシュコは7日、医療用大麻に関する政府の決定を伝えたフェイスブックへの投稿で、そう説明している。
ウクライナ政府が承認した法案は、緩和医療の質の向上や大麻に関する医学研究の奨励を目的としたもの。がんやPTSD、神経疾患など50あまりの病気の患者が必要な治療を受けやすくなる。同時に、国内での医療用大麻の栽培や生産、販売などは厳格に管理されるようになる。
地元日刊紙キーウ・ポストによると、2020年10月にウォロディミル・ゼレンスキー大統領が行った世論調査では、ウクライナ国民の大半(64.88%)が医療用大麻の合法化に賛成と答えていた(反対は29.53%)。
リャシュコの投稿から判断すると、今年2月末に始まったロシアによる侵攻が政府に大麻合法化を急がせることにつながったようだ。専門家らは、この戦争はすでに子どもや若者、高齢者を中心に深刻なトラウマをもたらしていると警鐘を鳴らしている。
ウクライナ政府は、幻覚を引き起こす大麻成分テトラヒドロカンナビノール(THC)に似た合成化学物質であるドロナビノールとナビロン、英国の製薬会社GWファーマシューティカルズが大麻から抽出して開発したナビキシモルスについては、昨年4月に合法化している。
一方、嗜好用大麻は今後も違法とされるとみられる。ウクライナで嗜好用大麻の販売や購入は行政罰や刑事罰の対象となっている。
ウクライナはソ連時代には世界有数の大麻生産国で、1950年代以前には広大な土地で工業用大麻が栽培されていた。