「債券相場が安定するまで、おそらく株価の壊滅状態は続くに違いない」。ニューズレター「セブンズ・リポート」のアナリスト、トム・エッセイは14日の顧客向けリポートにそう記した。
米金融市場では前日の13日、2年もの国債の利回りが一時3.42%に上昇し、10年もの国債の利回りを上回った。こうした「逆イールド」はリセッション(景気後退)の予兆とされる。
エッセイは、物価上昇率が高止まりしていることや、FRBの利上げによって米経済の成長が損なわれ、リセッションを招くとの懸念が広がっていることが、弱気な債券取引の背景にあると分析している。
13日には米主要株価指数が軒並み大幅安となり、S&P500種株価指数は直近高値からの下落率が20%を超えて弱気相場に突入した。投資家の不安心理を映すことから「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBPE)のボラティリティー・インデックス(VIX)は34に急上昇した。
とはいえ、この値は3月につけた今年最悪の36.5より低く、コロナ禍の影響でS&P500が急落した2020年3月20日の66ともかなり開きがある。データトレックのアナリストらは、相場が底入れするまでにはパニック売りを経ることが多く、その際には恐怖指数が跳ね上がるが、13日の数字はまだそこまでの高さにはなっていないと解説している。
アライ・インベストのブライアン・オーバービーによると、恐怖指数が40以上に上昇すれば、相場が一時的に底入れしたとみることができるという。オーバービーは、市場の実際のボラティリティーはこのところ、VIXが示唆するものより「かなり高くなっている」とも指摘している。
一方、モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソンは、S&P500は年内にさらに9%近く下落すると予想している。
米労働省が先週発表した5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇と40年超ぶりの伸び率を記録し、市場予想も上回った。そのため、FRBは今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、大方の予想である0.5ポイントを上回る0.75ポイントの大幅利上げに踏み切るのではないかとの観測が浮上している。
FRBの決定は15日午後(日本時間16日未明)に発表される。